◆発表のポイント
- 約20年にわたり施行された密封小線源療法の長期成績を報告しました。
- 全体で10年がん特異的生存率は99%でした。すなわち前立腺がんと診断された患者がこの治療を受けて10年以内に亡くなった方は1%のみでした。
- 密封小線源療法の効果について、長期にわたり高い生存率と安全性を確認でき、今後は局所治療 (フォーカルセラピー)としてさらなる低侵襲化を目指しています。
岡山大学病院では、前立腺がんに対して放射線を出す小さなカプセルを前立腺の中に埋め込む「密封小線源療法」という治療を行っています。この方法は手術と比べて体への負担が少なく、日常生活を続けながら治療できるのが特徴です。
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)腎泌尿器科学の荒木元朗教授と、学術研究院医療開発領域(岡山大学病院 腎泌尿器科)の河田達志助教(特任)らのグループは、2004年から20年間にわたって治療を受けた648人の患者さんを対象に長期の経過を調べたところ、治療後10年の時点で9割以上の方に腫瘍マーカーの再上昇がなく、全体として非常に良好な結果が得られました。また、副作用も少なく、安全性が高いことが確認されました。今後は、がんのある部分だけを狙って治療する「フォーカルセラピー(部分小線源治療)」としての応用を目指しています。これにより、治療効果を維持しながら副作用をさらに減らし、より多くの患者さんが安心して治療を受けられることが期待されます。
◆研究者からひとこと
| 密封小線源療法は、がんの根治と生活の質の両立を実現できる治療法です。今回の長期成績は、その有効性と安全性を裏付ける貴重なエビデンスとなりました。今後は、MRIや分子イメージング技術の発展を背景に、がん病巣をピンポイントで治療する局所治療としての応用を進め、より個別化された前立腺がん治療を目指します。 | ![]() 荒木教授 |
| 密封小線源療法は、日常生活を続けながら治療できることが強みになります。実際に診療していると、「治療を受けたあとも生活のリズムが変わらなかった」という声をいただくことが多く、患者さんの満足度が高い治療だと感じています。 今回の長期成績は、そうした臨床現場での実感を裏付けるものとなりました。今後は、必要な部分だけをより正確に治療する方法へと発展させ、さらに負担の少ない前立腺がん治療を目指していきます。 | ![]() 河田助教(特任) |
■論文情報
論文名:Oncological impact of neoadjuvant hormonal therapy on permanent iodine-125 seed brachytherapy in patients with low- and intermediate-risk prostate cancer
掲載誌:International Journal of Urology
著 者:Atsushi Takamoto, Ryuta Tanimoto, Kensuke Bekku, Motoo Araki, Takuya Sadahira, Koichiro Wada, Shin Ebara, Norihisa Katayama, Hiroyuki Yanai, Yasutomo Nasu
DOI:10.1111/iju.13555
URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/iju.13555
※この論文は2018年に、International Journal of Urology に掲載されたものです。
<詳しい研究内容について>
前立腺がんに対する密封小線源療法の長期経過を調査~良好かつ安全な治療成績を基に局所療法に応用~
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医療開発領域(岡山大学病院腎泌尿器科)
助教(特任) 河田 達志
(電話番号) 086-235-7287 (FAX) 086-231-3986

