◆発表のポイント
- 塩基編集による変異誘発手法を用いて、イネの主要なカドミウム吸収輸送体遺伝子であるOsNramp5に変異を導入し、カドミウムの蓄積を選択的に低下させる変異を特定することに成功しました。
- この変異により、OsNramp5は亜鉛(Zn)に対する選択性を高め、亜鉛とカドミウムとの拮抗作用が生じました。その結果、収量や他の必須元素の蓄積にほとんど影響を与えることなく、種子へのカドミウム蓄積を著しく減少させることが明らかになりました。
岡山大学学術研究院先鋭研究領域(資源植物科学研究所)の馬建鋒教授らの研究グループは、中国科学院遺伝発育生物学研究所との共同研究により、塩基編集を用いた突然変異誘発(4)によって、低カドミウム集積イネの作出に成功し、カドミウム集積を低下させる仕組みを発見しました。これらの研究成果は、6月19日付で米国科学アカデミー発行の機関誌『Proceedings of the National Academy of Sciences』に掲載されました。
カドミウム(Cd)は発がん性を有する重金属であり、イタイイタイ病の原因物質としても知られています。主食である米は我々にとって主要なカドミウム摂取源であるため、土壌から種子へのカドミウム移行を制限することは、健康上の極めて重要な課題です。
本研究では、イネの根においてマンガン(Mn)とカドミウムの取り込みに関与する主要な輸送体遺伝子であるOsNramp5を標的とし、塩基編集による変異誘発スクリーニングを実施しました。その結果、441番目のアミノ酸(イソロイシンからスレオニンへの置換)における単一アミノ酸置換が、収量や他の必須金属の蓄積に影響を与えることなく、藁および玄米中のカドミウム蓄積を大幅に減少させることを見出しました。さらに、各種解析により、この変異が選択的にカドミウム集積を低下させる分子メカニズムの一端も明らかにしました。
◆研究者からひとこと
| 2012年に我々は、イネにおける主要なカドミウム輸送体であるOsNramp5を発見しました。しかし、この輸送体は必須元素であるマンガンの輸送も担っているため、OsNramp5遺伝子を単純に破壊してしまうと、収量の低下を招くことが課題でした。そのため、カドミウムのみを選択的に蓄積させないようにする技術の開発が世界的な研究課題となっていました。今回我々は、ゲノム編集技術を用いてOsNramp5に特定の変異を導入することにより、この課題を解決することに成功しました。 | ![]() 馬教授(左)と第一著者黄勝博士研究員 |
■論文情報
論 文 名:Genome-edited rice variety with low-cadmium accumulation in the grain
邦題名 「ゲノム編集によるカドミウム低集積イネの育成」
掲 載 誌:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
著 者:Sheng Huang, Noriyuki Konishi, Weicai Chen, Naoki Yamaji, Jun Ge, Xiangbing Meng, Yanhui Jing, Yonghong Wang, Wenguang Wang, Hong Yu, Jian Feng Ma, Jiayang Li
D O I:10.1073/pnas.2610609123
U R L:https://doi.org/10.1073/pnas.2610609123
■研究資金
本研究は、主に独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(21H05034、25H01332、26K21758 研究代表:馬建鋒)の支援を受けて実施しました。
<詳しい研究内容について>
選択的にカドミウム集積を低下させる仕組みを発見!
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院先鋭研究領域(資源植物科学研究所)
教授 馬 建鋒
(電話番号)086-434-1209
