プレスリリース

ホーム > プレスリリース > 炎症性サイトカインの一つであるTNF-αが歯髄細胞の未分化性獲得と維持を誘導

炎症性サイトカインの一つであるTNF-αが歯髄細胞の未分化性獲得と維持を誘導

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯学系)インプラント再生補綴学分野の窪木拓男教授らの研究グループは、代表的な炎症性サイトカインの一つである腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の一時的刺激が、歯髄細胞の未分化性獲得と維持に関与することを初めて明らかにしました。本研究成果は2014年2月28日、『Stem Cell Research & Therapy』で公開されました。
 従来、強い炎症環境は細胞のプログラムされた死を誘導するなど、負の側面を持つことが知られていましたが、今回の研究成果は、適度な炎症環境が組織幹細胞の未分化性獲得や維持、炎症制御に密接に関わり、再生の場の準備に強く関わる可能性を示唆しており、今後の組織再生の考え方に大きな影響を与えるものといえます。
<業 績>
 組織再生には様々なサイトカインによって創傷部位に誘導される組織幹細胞が重要な働きを担っていることが知られています。実際我々の研究からも、歯質切削等の刺激直後に、歯髄腔に間葉系幹細胞が出現することがわかりました。そこで、組織損傷時に発現が誘導される炎症性サイトカインに着目し、これら炎症性サイトカインが組織幹細胞の遊走や幹細胞性の獲得・維持に関与するのではないかと仮設を立てました。そして、いくつかの炎症性サイトカインを用いヒト歯髄細胞を刺激したところ、短期間のTNF-α刺激時においてのみ、間葉系幹細胞マーカーの発現が上昇し、TNF-α刺激を行なった歯髄細胞は、骨芽細胞や脂肪細胞など他の細胞への分化効率が高まることが明らかとなりました。

<見込まれる成果>
 炎症と再生は、生体の創傷治癒メカニズムの根幹をなす反応と考えることができます。近年、間葉系幹細胞自体に炎症や免疫反応を押さえる作用があることがわかってきました。本研究のように、間葉系幹細胞が歯髄創傷部位や感染局所に一時集積することを考えると、これらの未分化な細胞は、組織損傷後の炎症制御や多分化能がある細胞供給源として機能している可能性があります。このような作用のある間葉系幹細胞を誘導するメカニズムは十分知られておらず、本研究成果はその一端を垣間見せるものとして大変貴重な知見と考えられます。また、将来的には、間葉系幹細胞を未分化な状態に保ったまま、大量に培養するための基盤技術となる可能性もあります。

 露髄2日後(ラット臼歯)、歯髄腔には間葉系幹細胞マーカーの一つであるCD146陽性細胞が多数観察された(左図; p: 歯髄、d:象牙質、青:核、緑:CD146).また、in vitroにおいて、歯髄細胞をTNF-αで刺激すると、間葉系幹細胞マーカーの一つであるSSEA4の発現が上昇した(右上図:免疫染色(青:核、緑:SSEA4)、右下図:FACS解析)。

 本研究は独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金 基盤研究(A)および挑戦的萌芽研究の助成を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます
Ueda M, Fujisawa T, Ono M, Hara ES, Pham HT, Nakajima R, Sonoyama W, Kuboki T. A short-term treatment with tumor necrosis factor-alpha enhances stem cell phenotype of human dental pulp cells. Stem Cell Res Ther. 2014 Feb 28;5(1):31.

参考論文
1) Hara ES, Ono M, Eguchi T, Kubota S, Pham HT, Sonoyama W, Tajima S, Takigawa M, Calderwood SK, Kuboki T. miRNA-720 controls stem cell phenotype, proliferation and differentiation of human dental pulp cells. PLoS One, 2013, 730(12), e83545.
2) Akiyama K, Chen C, Wang D, Xu X, Qu C, Yamaza T, Cai T, Chen W, Sun L, Shi S. Mesenchymal-stem-cell-induced immunoregulation involves FAS-ligand-/FAS-mediated T cell apoptosis. Cell Stem Cell. 2012 May 4;10(5):544-55.

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
インプラント再生補綴学分野
教授 窪木拓男、助教 大野充昭
(電話番号)086-235-6680(FAX番号)086-235-6684
(インプラント再生補綴学分野のページ) //www.okayama-u.ac.jp/user/implant/index.html