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光ストレスを受けた植物内での光合成関連タンパク質の凝集を明らかに

 岡山大学大学院自然科学研究科(理学系)生物科学専攻の山本泰教授らの研究グループは、「植物が光合成を行っている葉緑体に過剰な光が照射されたとき、葉緑体チラコイド膜の上で光合成関連タンパク質が移動し凝集すること、また膜が本来もっている積み重なり構造がゆるむこと」を世界で初めて明らかにしました。
 本研究の結果は2014年3月7日、日本植物生理学会の英文雑誌『Plant and Cell Physiology』(Oxford University Press)電子版に掲載されました。
 これまでは、地球温暖化などの気象変動で著しい影響を受けている植物が、実際にはどのような影響を細胞や生体膜、さらに分子のレベルで受けているのかわかっていませんでした。本研究では、このメカニズムを世界で初めて明らかにしました。この成果は植物の基礎研究分野だけではなく、今後のエネルギー・食糧・環境問題などに寄与することが考えられ、私たちの生活に大きな影響を与える研究です。
<業 績>
 地球温暖化で、暑い夏には地球上の全生物が強い光や高温の影響を受けやすい状況になっています。最も影響を受けるのは温暖化の原因を作り出した私たち人間ではなく、むしろ自然環境の中で生きている動物や植物、特に多くの陸上植物たちだと言えます。なぜなら、彼らは季節や日々の気象変動のなかで自身が自由に動くことができず、気象変動などの環境ストレスの影響を直接受けているからです。
 ただ、この環境ストレスの影響は具体的には植物の細胞や細胞を構成する生体膜や分子のレベルではどのように現れるのかが不明でした。これを明らかにしたのが本研究です。
 本研究の最も大きな発見は、光や熱のストレスを受けたときに、チラコイド*の膜上で光合成に関連するタンパク質が凝集するという点です。このタンパク質の凝集は、光の強さによって変化し、過剰であるが耐えられる光の場合には、タンパク質の凝集は可逆的で、これが余分な光エネルギーを熱として逃す役割を果たします。しかし、耐えられないほど強い光を受けた場合には、タンパク質の凝集が不可逆的に起こり、葉緑体の機能が阻害されてしまいます。高温の状態では、それ単独ではストレスにはならなくても、そこに比較的弱い光が当たると、それらが相乗的なストレスとして働き、植物はそのストレスに耐えられなくなってしまいます。
 このように、タンパク質の凝集が葉緑体の、ひいては植物全体の生死を分ける重要な鍵になっていることが、私たちの研究でわかってきました。
 このタンパク質の凝集が起きる際には、チラコイド膜の上のタンパク質の移動する度合いに変化が生じたり、チラコイド膜の特徴的な積み重ね構造がゆるんだりと、ダイナミックなチラコイドの構造変化が起きることも世界で初めてわかりました。

図1: ホウレンソウ葉緑体チラコイド膜の電子顕微鏡写真(左:暗条件、右:強光照射条件)暗条件下では、チラコイド膜はきれいに積み重なっているが、強光を照射するとその積み重なりが端の方からゆるむ。




図2:葉緑体のチラコイド膜に過剰な光があたると、チラコイドの積み重なりがゆるむが(図1の電顕写真)、その時チラコイド膜を上からみると、膜に存在するタンパク質が移動し凝集することが分かった(上の図)。これは強光ストレスに対して葉緑体チラコイド膜が示す反応で、その実態が本研究で初めて明らかにされた。


<見込まれる成果>
 地球温暖化で多くの陸上植物がその生息域を(北半球の場合では)北上させていることはよく知られています。例えば稲をみると、九州ではすでに暑すぎて良質の米が収穫できない状態になっており、今では主要な産地がかつては米の収穫が見込めなかった北海道まで移っています。また、ミカンもリンゴも産地が次々と北上しています。
 このように地球温暖化の影響は、表面上は著しく温暖化が進んだ地域での植物の死と言う形で現れますが、その中身、つまり温暖化のストレスが植物の最も重要な反応である葉緑体の光合成反応にどのような形で現れるのかを細胞・分子レベルで調べた研究は今まではありませんでした。
 今回の研究成果は、将来、高温や強光に強い植物(農作物を含む)を作出する際の重要なヒントになると考えられます。

<補 足>
 チラコイド:高等植物の葉緑体には、その内部にチラコイド膜という緑色をした袋状の膜があり、幾重にも重なって横に広がっています。このチラコイド膜はクロロフィルや多くのタンパク質を含み、光合成で植物が光を吸収した後に起きる光化学反応(いわゆる明反応)の場となっています。

 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科研費 (基盤C) 24570053の助成を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます
発表論文:Yasusi Yamamoto, Suguru Kai, Atsuki Ohnishi, Nodoka Tsumura, Tomomi Ishikawa, Haruka Hori, Noriko Morita and Yasuo Ishikawa. Quality Control of Photosystem II: Behavior of Photosystem II in the Highly Crowded Grana Thylakoids under Excessive Light. Plant and Cell Physiol(2014年6月,印刷中)(doi: 10.1093/pcp/pcu043)

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科 生物科学専攻 教授
山本 泰
(電話番号)086-251-7860
(FAX番号)086-251-7876
(山本研究室のページ)http://www.biol.okayama-u.ac.jp/yamamoto/home.htm