国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

心臓の構造や機能を維持する仕組みを解明

2014年05月29日

 本学大学院医歯薬学総合研究科の片野坂友紀助教と成瀬恵治教授らのグループは、「メカニカルシグナルを利用して心臓の構造や機能を維持する仕組み」を世界で初めて解明しました。本研究成果は、2014年5月29日に、『Nature Communications』に発表されます。心臓は、全身の臓器へ血液を送るポンプの役割を担っており、血圧などの血行動態の変化に応じて形状や収縮力を変えてポンプとしての仕事を一定に保つ能力をもっています。しかし、血行動態の変化を感知する機械刺激受容体(メカノセンサー)が明らかになっていなかったために、この心臓の機能を一定に保つ仕組みは不明のままでした。本研究では、心筋細胞がメカニカルシグナルを介して、構造や機能を維持する仕組みを明らかにしました。本研究成果によって、血行動態により引き起こされる心肥大・心不全の発症の仕組みを明らかにすることが期待されます。
<業績>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の片野坂友紀助教と成瀬恵治教授らのグループは、心臓の介在板に局在するTRPV2が心臓の構造や機能を維持するために必須の分子であることを、世界で初めて明らかにしました。
 全身に血液を送るポンプとして収縮と弛緩を繰り返す心臓は、常時メカニカルストレスにさらされた状態にあります。心臓を構成する心筋細胞は、細胞間で機能的・電気的に連絡しているため、同期した収縮と弛緩が生じ、安定したポンプとしての仕事が可能となります。心筋細胞同士の連絡部位は介在板と呼ばれ、隣り合う細胞を機械的・電気的に繋ぐ役割を担う分子が集積しています。片野坂助教らの研究グループは、介在板に局在するメカノセンサー候補分子のTRPV2を発現抑制したマウスでは、介在版構造が乱れ、重篤な心不全が引き起こされることを発見し、この分子が心臓の構造や機能を維持するために欠かせないことを示しました。また、メカニカルストレスに応じてTRPV2を介したIGF受容体/PI3/Aktシグナル経路が活性化することが、心筋細胞の構造や機能を維持する仕組みのひとつであることを示しました。
 臨床でみられる心不全発症の経緯や原因は様々ですが、唯一の共通ルートは血行動態負荷であることが知られています。本研究の成果が、血行動態変化により引き起こされる心肥大や心不全発症の仕組みの解明に繋がることが期待されます。



 本研究は、総合科学技術会議により制度設計された最先端・次世代研究開発支援プログラムにより、日本学術振興会を通して助成されたものです。

<用語解説>
 TRPV2: Transient receptor potential cation channel subfamily V member 2
6回膜貫通領域をもつ陽イオンチャネルであり、熱や機械刺激によって開くとの報告がある。


<原論文情報>
Katanosaka Y, Iwasaki K, Ujihara Y, Takatsu S, Nishitsuji K, Kanagawa M, Sudo A, Toda T, Katanosaka K, Satoshi M, Naruse K. TRPV2 is critical for the maintenance of cardiac structure and function in mice. Nature Communications, 2014, 10.1038/ncomms4932

報道発表資料はこちらをご覧ください

<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
助教 片野坂 友紀
(電話番号) 086-235-7117
(FAX番号) 086-235-7430

年度