国立大学法人 岡山大学

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血小板の凝集に関わるタンパク質を特定 抗血液凝固薬の開発に貢献

2014年06月26日

 本学医歯薬学総合研究科(薬学系)の日浅未来 WTT助教と森山芳則教授らの研究グループは、止血を担う細胞である血小板でのATPやADP蓄積の仕組みと、この仕組みをブロックする阻害剤を世界で初めて明らかにしました。本研究成果は2014年6月1日、『Physiological Reports』で公開されました。
 血小板は組織損傷などの際、出血箇所に到達、活性化して密顆粒内に蓄積したATPやADPを分泌し、血小板凝集を促すことで血液凝固の初発因子となります。しかし、血小板密顆粒内へのATP蓄積の仕組みはよくわかっていませんでした。本研究では、VNUTというタンパク質が血小板密顆粒内にATPやADPを蓄積していることを明らかにし、グリオキシル酸がVNUTを阻害することを発見しました。
 今回の研究成果によって、血小板をターゲットとした抗血液凝固薬開発への応用が期待されます。
<業績>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科生体膜生化学分野の日浅未来助教と森山芳則教授らの研究グループは、血小板密顆粒に局在する小胞型ヌクレオチドトランスポーター(VNUT)が、凝集時に血小板から分泌されるATPやADPの蓄積を担う分子であることを、世界で初めて明らかにしました。
 血小板は止血に関わる細胞であり、傷ついた血管壁に粘着、活性化し、ATPやADPなどの伝達物質を放出することで周囲の血小板を活性化させ、お互いに凝集して血栓を形成します。血小板は密顆粒内にATPやADPを普段から蓄積しており、活性化時に放出します。日浅助教らの研究グループは、VNUTが血小板密顆粒に局在することを発見し、実際に機能していることを示しました。また、VNUTが発現抑制された血小板モデル細胞でATP/ADPの放出が減少することを示しました。さらに、グリオキシル酸が、血小板でのVNUT機能を阻害し、その結果ATP蓄積や放出を減少させることを見いだしました。

<見込まれる成果>
 ATPやADPは血小板機能を制御する因子として機能しています。本研究は、密顆粒内の内容物が蓄積されないことで発症する血小板機能低下症の原因解明につながることが期待されます。また、本研究ではグリオキシル酸が密顆粒内へのATP蓄積を阻害することを見いだしました。将来的には、抗血液凝固薬開発に繋がることが期待されます。

<用語解説・補足>
VNUT:Vesicular nucleotide transporter。ATPやADPを輸送するトランスポーター(輸送体)であり、2008年に森山教授らのグループにより発見された。

<発表論文>
Miki Hiasa , Natsuko Togawa , Takaaki Miyaji , Hiroshi Omote , Akitsugu Yamamoto , Yoshinori Moriyama. Essential role of vesicular nucleotide transporter in vesicular storage and release of nucleotides in platelets.
Physiological Reports, 2014, 2, e12034
DOI: 10.14814/phy2.12034
http://physreports.physiology.org/content/2/6/e12034.long

 本研究は、JST科学技術人材育成費補助金「テニュアトラック普及・定着事業」、科学研究費補助金「若手研究B」等の助成を受け実施しました。

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ先>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)生体膜生化学分野
 WTT助教 日浅 未来
 (電話番号):086-251-7934
 (FAX番号):086-251-7926


図1 血小板凝集機構
活性化した血小板から放出されたATPやADPによって周囲の血小板が活性化し、損傷部位に集まって凝集する。

図2 血小板でのVNUTの働き
VNUTは血小板密顆粒にてATPやADPを蓄積する役割を担う。グリオキシル酸はVNUT阻害効果をもち、血小板機能を抑制する。

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