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非アルコール性脂肪性肝炎にカルニチンが有効~新たな肝炎・肝癌の治療法として大きな期待~

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学教室の高木章乃夫准教授らの研究グループが、近年増加している非アルコール性脂肪性肝炎に対して、ミトコンドリア機能改善作用を有する「カルニチン」が有用であることを明らかにしました。本研究成果は、2014年7月1日にアメリカのオンライン総合科学雑誌『PLoS One』に掲載されました。
 現在、非アルコール性脂肪性肝炎に対しては、抗酸化剤ビタミンEが世界的に標準的治療として使用されています。しかし、本薬剤は動脈硬化性疾患などに対する臨床研究において、生命予後がむしろ良くない可能性が指摘されていました。そのため、これに代わる新たな治療法の開発が世界的に急務となっていました。今回の研究成果は、この世界の臨床現場のニーズに応えたものであり、今後、カルニチンが肝炎だけではなく、その先の肝癌まで見据えた新たな治療法開発の可能性を有するものとして期待されます。
<業 績>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学教室の高木章乃夫准教授らの研究グループが、近年増加している非アルコール性脂肪性肝炎に対して、ミトコンドリア機能改善作用を有する「カルニチン」が有用であることを脂肪性肝炎・肝癌動物モデルを用いて明らかにしました。
 現在、本疾患に対しては、抗酸化ストレス剤であるビタミンEが約2年間の大規模臨床研究データにより、肝障害改善に関して有用であることが明らかにされ、アメリカ肝臓学会ガイドラインをはじめ、世界中で標準治療とされています。しかし、以前からビタミンEのような抗酸化ストレス剤の有用性が期待されていた動脈硬化性疾患や全般的な生命予後に関する調査では、むしろ合併症増加・生命予後短縮の可能性が指摘されてきました。これは生体にとって必要な生体反応でもある酸化ストレスを除去してしまうことがむしろ生命予後に悪影響を及ぼす可能性を示しており、脂肪性肝炎も長期的な有用性についてはまだ解明されていないところがあります。
 一方、酸化ストレス・抗酸化ストレス作用の発生器官であるミトコンドリアの機能を補助するカルニチンについて、比較的小規模の臨床研究において非アルコール性脂肪性肝炎に対する有用性が報告されています。
 今回、研究グループでは、このカルニチンを用いた結果、脂肪性肝炎を経て肝癌に至る動物モデルにおいて、肝炎のみならず肝発癌に至る経過をカルニチンが改善する可能性を明らかにしました(図1、2)。
 これは、病気を進展させる過剰な酸化ストレスを抑制しつつ、生体にとって必要な酸化ストレスは維持しなければ最終的な生命予後延長に結びつかない可能性があるということを示します。抗酸化ストレス剤より、ミトコンドリア機能補助剤であるカルニチンがこのようなコントロールに有用である可能性が示されました。

図1. ビタミンEとカルニチンがマウスの脂肪肝炎に与える影響
   肝炎組織での観察像(A)、スコア(B)ともに組織の改善が認められる



図2. カルニチンによる肝発癌抑制効果について
  肉眼像(A)、腫瘍数・腫瘍サイズ(B)ともに抑制効果が認められた


<見込まれる成果>
 非アルコール性脂肪性肝炎は比較的新しく認識されるようになった疾患で、治療法は抗酸化ストレス剤であるビタミンE以外に確立されたものはありません。本症は糖尿病や高血圧などの生活習慣病と合併することが多く、動脈硬化性疾患に対する目配りもしながら治療していかなければなりません。また、酸化ストレスは感染防御にも必要な要因で、酸化ストレス誘導剤は抗がん剤としての臨床研究も行われている状況にあり、単純に「消し去れば良いもの」ではなく、適切にコントロールすることが必要と考えられます。
 カルニチンはミトコンドリア機能補助剤であり、単純な抗酸化剤とは異なる作用機序を持つとされているため、酸化ストレスの適切なコントロールが可能な薬剤となる可能性があります。将来的には臨床介入研究を行わなければなりませんが、非アルコール性脂肪性肝炎に対する新たな治療の可能性を示す大切な研究です。

<補 足>
 カルニチンは、長鎖脂肪酸をミトコンドリアに取り込む時に必須の役割を担う物質です。脂肪性肝炎においては、ミトコンドリア機能の低下が病気の進展に関与していることが明らかになっており、ミトコンドリア機能を改善することは有効と考えられます。
 一方でカルニチンにより誘導される物質が動脈硬化を悪化させる可能性も動物モデルで指摘されており、更なる研究が必要な領域となっています。

発表論文はこちらからご確認いただけます

発表論文:Ishikawa H, Takaki A, Tsuzaki R, Yasunaka T, Koike K, Shimomura Y, Seki H, Matsushita H, Miyake Y, Ikeda F, Shiraha H, Nouso K, Yamamoto K.:L-carnitine prevents progression of non-alcoholic steatohepatitis in a mouse model with upregulation of mitochondrial pathway. PLoS One, 2014, 9, e100627. (doi: 10.1371/journal.pone.0100627. eCollection 2014).
報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学 准教授 高木 章乃夫
(電話番号)086-235-7219
(FAX番号)086-225-5991
(URL)http://www.okayama-gastro.com/