国立大学法人 岡山大学

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CCN2が調和ある骨形成促進因子であることを実証

2013年05月08日

 本学大学院医歯薬学総合研究科の滝川正春教授、服部高子助教らの研究グループが、CCN2/CTGFを軟骨特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスを作成し、同マウスでは長管骨の伸長が見られることを世界で初めて突き止めました。本研究成果は2013年3月28日に米国のオンライン科学雑誌『PLOS ONE』に掲載されました。
 CCN2には調和ある組織再生作用があることが、同グループの他のいくつかの研究により明らかにされており、CCN2は、骨折治癒促進剤の開発の対象となるとともに、様々な内軟骨性骨化異常症の治療の新たな標的となる可能性が期待されます。
<業 績>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の滝川正春教授らは、自ら樹立したヒト軟骨細胞様細胞株HCS-2/8より1997年に肥大軟骨細胞に特異的に発現する遺伝子hcs-24をクローニングし、その遺伝子産物HCS-24(結合組織成長因子CTGFと同一の分子で現在CCN2と名前が統一されている)が、内軟骨性骨化に重要な役割を演ずる軟骨細胞、骨芽細胞、血管内皮細胞のin vitroでの増殖・分化を共に促進し、また、in vitroでの破骨細胞形成も促進することから、CCN2が内軟骨性骨化促進因子であるという仮説を立てていました。
 今回、同教授らのグループは、CCN2を軟骨特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスを作成し、同マウスでは実際に長管骨が伸長することを明らかにし、この自ら立てた仮説を実証しました。また、CCN2のこの作用の一部は、以前から軟骨細胞の増殖・分化を促進することが知られていたインスリン様成長因子を介していることがこの研究から解りました。

<見込まれる成果>
 私たちの身体を構成する大部分の骨は一旦軟骨を経て骨が形成される内軟骨性骨化により形成されます。この内軟骨性骨化の制御に乱れが生じることにより小人症、巨人症や骨形成不全症が起こります。また、骨折の治癒は内軟骨性骨化によりなされます。CCN2には調和ある組織再生作用があることが、滝川グループの他のいくつかの研究により明らかにされており、上記マウスにも骨伸長は見られるものの異常な軟骨・骨の増生は認められません。したがって、CCN2は、骨折治癒促進剤の開発の対象となるとともに、小人症等の内軟骨性骨化異常による疾患の治療の新たな標的となる可能性が期待されます。

<補 足>
 CCN2はCCN1~6の6つの分子種からなるCCNタンパク質・遺伝子ファミリーの一員である。このファミリータンパク質は、CCN5がC末モジュールを欠落する以外4つの特徴的なモジュール構造をもつ、システインに富む分泌タンパク質で、各モジュールが種々の細胞外マトリックス、増殖・分化因子、その受容体などに結合し、多彩な作用を発揮する。このような機構を介して、CCN2は、骨・軟骨の調和ある再生作用を示す一方、通常発現していない軟組織での異常な発現は、その強力なマトリックス合成促進作用から、種々の線維症を引き起こすことが示唆されており、その治療薬開発の標的としても注目されている。

 本研究は日本学術振興会(JSPS)科研費基盤研究(S)(110,500,000円)、基盤研究(C)(4,680,000円)および挑戦的萌芽研究(3,640,000円)の助成を受け実施しました。

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<お問い合わせ>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 教授
(氏名)滝川 正春
(電話番号)086-235-6645
(FAX番号)086-235-6649

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