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生後18か月以内の片眼性先天白内障での眼内レンズ挿入についての新たな知見を発表

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科眼科学分野の松尾俊彦准教授は、生後18か月以内の小児での片眼性先天白内障に対する眼内レンズ挿入について、その手術方法と安全性についての報告をまとめました。本研究成果は、2014年7月16日にアメリカのオンライン科学雑誌『Springer Plus』に掲載されました。
 岡山大学病院では、片眼性の先天白内障に対して弱視治療の目的で眼内レンズを入れる手術を行ってきており、本研究によって、安全な手術法で、術後経過も良いことが示されました。また、特に生後12か月以内の片眼性先天白内障では、術前検査では分からないような軽微な硝子体血管異常(胎生期血管遺残)が白内障の原因になっていることも分かり、今後の眼科医療に大きく貢献することが期待されます。
<業 績>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科眼科学分野の松尾俊彦准教授は、生後18か月以内の小児の片眼性先天白内障に対して実施した眼内レンズ挿入について、その手術方法と安全性を示しました。
また、特に生後12か月以内の片眼性先天白内障では、術前の検査で分からない軽微な硝子体血管異常があり、それが白内障の原因になっていることも分かりました。
 発達中の小児の眼を扱う先天白内障手術は、大人の白内障手術と比べて難度が高くなります。岡山大学病院では、2005年に最新の硝子体手術機器を導入し、その機器を白内障手術に応用。小児の先天白内障に対して小さな切開創で行う手術方法を実施してきました。手術を安全に行うために、細い器具(25ゲージの太さの針、つまり直径が約0.4mmのもの)を使用しています(図1)。

<背 景>
 先天白内障は、生まれつき眼の中の水晶体(レンズ)が濁っている疾患です。視力は生まれてからすぐに大人と同じように見えているのではなく、きれいな像が眼球の奥(眼底)の網膜に映り、それが脳に伝わり、脳の神経回路が発達して良好な視力が出てきます。このような視覚に関する脳の発達は3歳ぐらいまでに完成します。先天白内障があると、眼底に像が映らず、脳の神経回路が未発達のまま留まります。この状態を「弱視」と呼びます。したがって、先天白内障の場合には、できるだけ早く網膜にきれいな像が映るように手術や弱視の治療を行います。
 大人の白内障手術と同じように眼内レンズを入れる手術は、2歳以上の小児に対して、現在一般的に行われています。しかし、生後18か月(1歳6か月)以内の小児の先天白内障手術で眼内レンズを入れることについては、まだ共通の認識には至っていません。

図1.最新の硝子体手術機器の細い器具(針の太さが25ゲージ、つまり直径が約0.4mm)を使った先天白内障手術と眼内レンズ挿入


<見込まれる成果>
 両眼性の先天白内障では、眼内レンズを入れなくても、両眼の術後に眼鏡をかけて視力の発達を促すことができます。しかし、片眼性白内障の場合には健側眼の視力の発達も考える必要があり、眼内レンズを入れていない手術眼ではコンタクトレンズを使って視力の発達を促さないといけません。ところが小児でのコンタクトレンズの出し入れは、両親など家族の大きな負担になり、子供にとっても心理的負担になっています。
 本研究によって、生後18か月以内の小児への眼内レンズ挿入の安全性と良好な術後経過が示されたことは、片眼性先天白内障治療に対する新たな知見となり、今後の眼科医療に大きく貢献することが期待されます。

<補 足>
硝子体の胎生期血管遺残とは:
 胎生期には眼球後方の視神経乳頭から水晶体に向かって硝子体血管が伸びていますが、生まれる前には消えていきます。この硝子体血管や血管周囲の組織が生後も残っている状態を硝子体の胎生期血管遺残と呼びます。その遺残の程度はさまざまです。

発表論文はこちらからご確認いただけます。
発表論文:Matsuo T. Intraocular lens implantation in unilateral congenital cataract with minimal levels of persistent fetal vasculature in the first 18 months of life. SpringerPlus, 2014, 3, 361; (doi: 10.1186/2193-1801-3-361)

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
眼科学分野 准教授 松尾 俊彦
(電話番号)086-235-7297
(FAX番号)086-222-5059
(URL)http://www.okayama-u.ac.jp/user/opth/index.htm