国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

早食いする大学生は肥満になりやすい 3年の追跡調査で確認

2014年09月25日

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科予防歯科学分野の森田学教授の研究グループと同大保健管理センターの岩﨑良章准教授の共同研究グループは、早食いの習慣を持つ大学生が肥満になりやすいことを縦断研究1)において、世界で初めて突き止めました。
 現在、肥満の増加は欧米諸国だけでなく、わが国でも大きな問題になっています。今回、若年者においても早食いと肥満の関係が明らかになったことから、早食いは早期に是正することで、将来の肥満やメタボリックシンドロームの予防につながることが期待されます。
<業 績>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科予防歯科学分野の森田学教授、山根真由医員らの研究グループと同大保健管理センターの岩﨑良章准教授の共同研究グループは、食事のスピードと肥満の関連性について大学生を対象に3年間追跡調査。早食いの習慣を持つ大学生が肥満になりやすいことを明らかにしました。
 本研究成果は、2014年7月10日にアメリカの科学雑誌『Obesity』(電子版)に掲載されました。
 今回の結果から、早食いの者は早食いではない者よりも4.4倍肥満になりやすく、男性は女性よりも2.8倍肥満になりやすいことがわかりました。
 この関係は、他の生活習慣(「油っこいものを好んで食べること」や「満腹まで食べること」など)よりも強いものでした。さらに「肥満の前段階」になるリスクも高めることが判明しました(図)。
 従来から、ゆっくりとよくかんで食べることは健康のために良いと言われており、近年の疫学および基礎研究で、早食いと肥満の強い関連性明らかになってきています。しかし、「横断研究」2)の結果がほとんどであり、最新の総説では「縦断研究」が必要と言われていました。つまり、今回得られたわれわれの成果は、早食いと肥満との関係をより強固にするものであると考えられます。

図. 早食いの者は早食いでない者と比べて肥満リスクが4.4倍も高い



<見込まれる成果>
 日本人の場合、年齢とともに肥満になりやすい傾向があります。若いうちから、早食いの習慣を改善することは、将来の生活習慣病を予防するうえで公衆衛生学的な意義があると考えられます。
 肥満治療ガイドラインでは、「咀嚼法」が肥満治療における行動療法の1つとして明記されています。1回20~30回以上かむことも推奨されています。早期に早食いを是正することで、将来の肥満やメタボリックシンドロームの予防につながることが期待されます。

<補 足>
 平成24年度国民健康・栄養調査によると、肥満者(BMI≧25)の割合は、男性29.1%、女性19.4%でした。平成15年~24年では、20~60歳代男性の肥満者の割合は約30%でほぼ横ばいとなっています。男性の場合、20代、30代、40代になるにつれて肥満の割合が高くなります。女性の場合は、20代以降、年齢とともに肥満の割合が高くなります。
 早食いを自覚する者は、そうでない者よりも一口当たりの量が多く、かむ回数が少ない傾向があります。

<語句説明>
1) 縦断研究:縦断研究とは、同一の対象者を一定期間継続的に追跡調査するもの。横断研究で得られる証拠よりも質が高い。
2) 横断研究:横断研究とは、ある一時点においての観察を行うもの。

本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科研費補助金「基盤(C)」および公益財団法人8020推進財団の助成を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます

発表論文:Relationships between eating quickly and weight gain in Japanese university students: A longitudinal study. Yamane M, Ekuni D, Mizutani S, Kataoka K, Sakumoto-Kataoka M, Kawabata Y, Omori C, Azuma T, Tomofuji T, Iwasaki Y, Morita M. Obesity (Silver Spring). (DOI:2014 Jul 10. doi: 10.1002/oby.20842.) [Epub ahead of print]

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)
教授 森田 学
(電話番号)086-235-6712
(FAX番号)086-235-6714
(URL)http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~preventive_dentistry/top.html

年度