国立大学法人 岡山大学

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クオドリウイルスファミリーに兄弟発見

2013年05月17日

 本学資源植物科学研究所の鈴木信弘教授の研究グループが、第2のクオドリウイルス系統を世界で初めて詳細に解析しました。本研究成果は『Archives of Virology』の2013年5月号に公開されました(4月27日)。
 現在、国際ウイルス分類委員会により87の科が認知されています。その後、私どもが提案した2つの新しい科(Megabirnaviridae, Quadriviridae)が認められました。これまでクアドリウイルス科については、代表種として認められている系統しか解析例はありませんでした。本論文では、第2のクオドリウイルス系統を詳細に解析しました。
<業 績>
 植物病原糸状菌はウイルスハンティングのフロンティアとなっています。岡山大学、果樹研究所(盛岡市、つくば市)の共同研究グループ4人は、過去5年間に植物病原糸状(子のう菌)である白紋羽病菌Rosellinia necatrixから分離された多数のウイルス(菌類ウイルス)の性状解析を進めてきました。クオドリウイルスの第1例(Rosellinia necatrix quadrivirus 1-W1075)は私どもにより昨年報告されました。今回は第2例の報告です。第2例(Rosellinia necatrix quadrivirus 1-W1118)も第1例と同様に植物病原糸状(子のう菌)である白紋羽病菌Rosellinia necatrixから分離されました。
 菌類に感染するウイルスの科は現在14存在します。その中には私どもが提案した2つの新しい科(Megabirnaviridae, Quadriviridae)が含まれます。今回の報告はクオドリウイルス科の確立に大きく貢献しました。

<見込まれる成果>
 私共の一連の研究の大目的は白紋羽病菌を病気にする(果樹に対する病原力を衰退させる)ウイルスを使用して果樹を白紋羽病から防除(ヴァイロコントロールと提唱)することでした。私共は、既に強力なヴァイロコントロール因子となるようなウイルスの発見に成功しました。同時に、菌類には実に多様なウイルスのナノ世界が存在することを示しました。すなわち、既に10種以上の新種ウイルスを発見し、そのうち2種は新しい科に属することを提案し、国際ウイルス分類委員会に承認されました。今後も、次々と新しい種、属、あるいは科に属する菌類ウイルスが発見され、その中にヴァイロコントロール因子として有望なウイルスが含まれることが大いに期待されます。

<補 足>
 クオドリウイルスの共通な特徴として、ゲノムが4分節dsRNAセグメントから成り、球状粒子(直径45 nm)を生産すること、末端塩基が多様性を示します。末端塩基の多型はウイルスゲノムとしては極めて珍しい例となります。
 白紋羽病菌は、非常に広い宿主範囲(400種以上)をもつ土壌に生息する糸状菌です。日本では特に多年生の果樹(日本ナシ、リンゴ、ブドウなど)で大きな被害がでています。

 本研究は生物系特定産業技術研究支援センター イノベーション創出基礎的研究推進事業(シーズ開発型研究)の助成を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます

報道発表資料はこちらをご確認ください

<お問い合わせ>
 岡山大学資源植物科学研究所 教授
(氏名)鈴木信弘
(電話番号)086-434-1230
(FAX番号)086-434-1232

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