国立大学法人 岡山大学

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抗HCV薬リバビリンの効き目を決める分子機構を解明

2013年05月17日

 本学医歯薬学総合研究科の加藤宣之教授の研究グループが、C型慢性肝炎の治療薬であるリバビリンの効き目を決める宿主遺伝子を突き止め、その分子機構を明らかにしました。本研究成果は2013年3年26日(米国東部時間)に米肝臓専門誌『Hepatology』電子版に掲載されました。
 本研究成果により得られた宿主遺伝子の発現調節を人為的に行うことができれば、リバビリンの抗ウイルス作用を高めることや貧血等の副作用の軽減が可能になるものと期待されます。
<業 績>
 岡山大学医歯薬学総合研究科と就実大学薬学部の共同研究グループ7名は、C型肝炎ウイルス(HCV)感染により引き起こされるC型慢性肝炎の治療薬として使用されている核酸アナログであるリバビリンの作用機序の解明に取り組み、リバビリンの抗HCV活性を決定する宿主遺伝子の同定に成功しました。さらに、その宿主遺伝子が発現する際に特殊な機構が働いていることも明らかにしました。
 今回同定した宿主因子はアデノシンキナーゼという核酸代謝酵素の一種で、リバビリンをリン酸化します。リン酸化されたリバビリンはイノシン一リン酸脱水素酵素を阻害してGTPの細胞内濃度を急速に下げます。これによりHCV遺伝子の複製が低下するので、リバビリンの抗HCV活性が発揮されることになります。本研究により、リバビリンの抗HCV活性がアデノシンキナーゼ遺伝子の発現レベルに依存していることが明らかになりました。さらに、アデノシンキナーゼmRNAの翻訳は通常の翻訳機構とは異なり、IRES(internal ribosome entry site)という特殊な翻訳機構で行われていることも明らかになりました。これら一連の研究成果は、2009年に本研究グループが独自に見出したHCV複製を許容する新しいヒト培養細胞(欧米特許審査中)を用いることにより得られました。この新しいヒト培養細胞は、これまで汎用されて来た培養細胞とは異なりリバビリンに高感受性を示したことから、これまで困難であったリバビリンの作用機序の解明を行うことができました。

<見込まれる成果>
 アデノシンキナーゼの発現レベルを知ることにより、肝炎治療における投与量の決定や治療効果の予測、さらには貧血等の副作用のコントロールに役立つことが期待されます。
 また、アデノシンキナーゼ遺伝子の発現増強剤やアデノシンキナーゼの活性化剤を見出すことができれば、リバビリンの抗HCV活性をさらに高めて治療効果を上げることが期待されます。

<補 足>
 リバビリンと併用することにより相乗効果を示す新しい抗HCV薬候補も得られております
(国内特許取得:http://jstore.jst.go.jp/nationalPatentDetail.html?pat_id=28546
 C型慢性肝炎患者の肝臓でのアデノシンキナーゼの発現量と肝線維化のステージが有意に逆相関する結果も得られていることから、アデノシンキナーゼは肝病態の進行にも関係している可能性があります。

 本研究は厚生労働科学研究費補助金の肝炎等克服緊急対策研究事業の助成を受け実施しました。

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<お問い合わせ>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 教授
 腫瘍ウイルス学分野
(氏名)加藤 宣之
(電話番号)086-235-7385
(FAX番号)086-235-7392

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