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驚異の新種! アキラマイマイ~「晴れの国おかやま」を象徴するかたつむり~

 本学大学院環境生命科学研究科(農)の福田宏准教授、国立科学博物館の亀田勇一支援研究員の共同研究グループは、岡山県南部と香川県島嶼部に固有な陸産貝類(かたつむり)の新種を認識し、アキラマイマイと記載・命名しました。本研究成果は2015年1月15日刊行の「Venus」(日本貝類学会発行)に掲載されます。
 アキラマイマイは市街地周辺に多産するにも関わらず見過ごされてきました。その姉妹種シメクチマイマイと外見で識別できず混同されてきたからです。貝類では、互いに別種であるのに殻などの外部形態で識別できない例は極めて稀です。
 本研究グループは、アキラマイマイが人類による干拓以前は離島であった場所、シメクチマイマイがもともと陸地であった場所に主として分布していることも突き止めました。
 降雨量が少ない備讃地方は、陸産貝類の種の多様性が際立って低く、全国でも屈指の「かたつむり不毛の地」と見なされてきました。アキラマイマイは、「不毛な」備讃地方で独自の進化を遂げた比類のない種と考えられ、この地方の自然環境の特性とその歴史的変遷を象徴する貴重な存在といえます。
ポイント
○市街地などごく身近に棲息していながら、ずっと見過ごされてきた種であること。
○殻などの外部形態で近縁種と識別できないこと。
○他の陸産貝類にとって過酷な乾燥した環境で、独自の進化を遂げた種であること。
○その分布様式から、自然環境の特性や歴史的変遷を知ることができること。

<発見の経緯と特徴>
 ナンバンマイマイ科陸産貝類のシメクチマイマイ(学名:Satsuma ferruginea (Pilsbry, 1900))は西日本に広く分布するとされてきましたが、多くの地理的変異が存在し、分類の混乱が以前から指摘されていました。本種の学名は本来、岡山市の個体に対して命名されたので、“本物の”シメクチマイマイを再定義するために岡山県周辺の個体を詳細に検討したところ、予想外にも2つの異なる種(生殖器の解剖およびDNAの塩基配列で識別が可能)の混在が判明し、シメクチマイマイではない方の種を新種アキラマイマイ(学名:Satsuma akiratadai Kameda & Fukuda, 2015)として記載・命名しました。この新種は市街地周辺に見られるにも関わらず、ずっと見過ごされてきたのです。
 シメクチマイマイとアキラマイマイはともに殻径13〜22 mm程度で、殻の形・色彩・大きさなど形態のどの点でも明確な識別はできません(図1)。互いに別種であるのに殻などの外部形態で全く識別できない例は、日本の陸産貝類ではこれまでに1例しか知られていません。
図1:シメクチマイマイ(左3列)とアキラマイマイ(右3列)の殻。

<種名(和名・学名)の由来>
 アキラマイマイの存在に最初に気づいたのがアマチュア研究家多田昭氏(元香川中部養護学校教諭、東かがわ市在住)です。多田氏は長年各地で陸産貝類の採集と解剖を本務の傍ら地道に続けられ、早くからシメクチマイマイに複数種が混在していることを独自に突き止めていました。本研究グループは、生殖器の解剖に加え、DNA塩基配列を用いた系統解析によって多田氏の見解が正しかったことを証明し、同氏の洞察力と見識を称えて新種の学名と和名を献名しました。

<分布と棲息環境>
 アキラマイマイは、世界でも岡山県南部(岡山市、早島町、倉敷市、玉野市、浅口市)および香川県島嶼部(塩飽諸島)・荘内半島先端に分布が限定され、瀬戸内海中央部(備讃地方)沿岸域・離島の固有種です。その大半は人類による干拓以前は離島であった場所です。一方、シメクチマイマイはもともと陸地であった場所に主として分布します。このことから、この2種は備讃地方の海岸線の歴史的変遷を今に伝える、語り部のような存在といえます(図2)。
 また、アキラマイマイの分布する瀬戸内海中央部沿岸域は、岡山県のキャッチコピー「晴れの国おかやま」が示す通り、降雨量が少ないことで知られています。一般に、そのような乾燥した環境は、湿り気を好む生物(その好例が陸産貝類)にとって過酷です。実際に岡山県南部は、他の地方に比べて陸産貝類の種の多様性が際立って低いため、貝類研究者には「全国屈指のかたつむり不毛の地」と見なされてきました。アキラマイマイはこうした「過酷な不毛の地」で独自の進化を遂げた比類のない種と考えられます。
図2:約1500〜2000年前の岡山県南部(海岸線は推定)に、アキラマイマイ(●)とシメクチマイマイ(▲)の現在の分布を重ねた地図。オレンジ色は両種の交雑の痕跡が認められる個体群。アキラマイマイの大半は、当時離島だった場所に分布が限られている。

<今後の課題・保全の必要性>
 シメクチマイマイとアキラマイマイは、おおむね排他的に分布しているものの、両種の分布の境界では過去の交雑の証拠も見つかっており(図2、オレンジ色の産地)、現在もせめぎ合いが続いていると思われます。特に倉敷市北部や浅口市西部では両種の産地が著しく近接しており(最短で500 m)、そこで2種の間にどんなことが起こっているかは、進化生物学的に極めて興味深い研究テーマです。
 また、両種とも、主に低地の里山環境に棲息するため、近年の都市化に伴う森林伐採によって減少傾向にあると考えられます。また、両種ともに竹林は棲息に適さないことが今回の調査で判明しました。近年は人為的な管理の放棄によって急速に竹林が拡大しており、両種の棲息地は狭められつつあります。その上、アキラマイマイは狭い範囲の固有種であるため、環境省レッドデータブック2014に掲載された他の稀少陸産貝類とのバランスを考慮すると「絶滅危惧II類(VU)」に相当すると考えられ、保全措置が必要です。

<特別展の開催について>
 本プレスリリースと同時に、岡山県自然保護センター(和気町田賀)において、アキラマイマイとシメクチマイマイに関する特別展が開始されます。

日  時  平成27年1月15日~平成27年3月30日(予定)
      (毎週火曜日及び祝日の翌日は休館)
場  所  岡山県自然保護センター 岡山県和気郡和気町田賀730
公開時間  午前9時~午後4時30分
入 場 料  無 料

<論文情報>
著  者  Yuichi Kameda and Hiroshi Fukuda
タイトル  Redefinition of Satsuma ferruginea (Pilsbry, 1900) (Camaenidae), with description of a new cryptic species endemic to the coasts and islands of the central Seto Inland Sea, western Japan
掲載誌  Venus 73(1–2): 15–40.(日本貝類学会発行)
日本貝類学会ホームページはこちら http://www.malaco-soc-japan.org/

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学大学院環境生命科学研究科(農)
水系保全学研究室 准教授 福田 宏
(電話番号)086-251-8370, 090-9687-7671
(FAX番号)086-251-8370