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次世代材料で触媒の長寿命化に成功

 岡山大学異分野融合先端研究コアの仁科勇太准教授らの研究グループは、日本原子力研究開発機構と北海道大学触媒化学研究センターと共同で、非常に薄い炭素シート(酸化グラフェン)に白金微粒子を満遍なく固定化し、同時にシリカコーティングする合成法を開発。従来よりも優れた触媒活性と耐久性を持つ触媒を作り出すことに成功しました。本研究成果は、2015年2月23日にイギリスの科学雑誌『Chemical Communications』にオンライン速報としてAccepted Articleとして掲載されました。
 排ガス浄化などに使える触媒の長寿命化によって、貴金属の使用量を低減することができるため、レアメタル(希少金属)問題の解決に貢献できると期待されます。
<業 績>
 従来の白金-酸化グラフェン複合体は、金属の固定化に強力な還元剤を用いていたため、酸化グラフェンの凝縮が併発。触媒活性が非常に低くなってしまうという問題がありました。
 本研究では、酸化グラフェンの凝集を抑制するため、非常に温和な還元剤であるヒドロシランを混合した溶媒の中で白金微粒子を形成し、酸化グラフェン上に固定化。単層の酸化グラフェンに金属を固定化する今までにない革新的な合成法を開発しました。本合成法では、還元剤として用いたヒドロシランによって、高温条件で耐久性を高める役割を持つシリカコーティングを形成することが分かりました。(図1)
 市販の触媒である白金-炭素複合体は、初期活性は高いものの、高温条件では、炭素原子が燃焼。白金の凝縮によって、即座に触媒活性を失います。一方、本研究で作成した白金-酸化グラフェン複合体は、高温での触媒反応後にもナノ粒子の構造を保持し、活性を長期間にわたって持続できることが分かりました(図2、3)

<背 景>
 本研究グループは、2012年以降、炭素原子と酸素原子を主として含む2次元シート材料「酸化グラフェン」の効率的合成法の確立と用途開拓を行っています。酸化グラフェンは、安価かつ大量に存在するグラファイト(黒鉛)を酸化することにより得られ、炭素原子1個の厚みからなる材料です。二次電池、透明導電膜、触媒、環境浄化材、潤滑剤などの幅広い用途を開拓する取り組みが盛んに行われています。
JSTやNEDOプロジェクトで酸化グラフェンの大量合成や機能化について精力的に研究を行い、社会実装を目指した研究を行っています。

<見込まれる成果>
 白金とグラフェンの複合体は、均一系触媒反応のみならず、ガス系の触媒反応においても高い活性を示します。燃料電池の電極触媒などにも応用できる可能性があり、酸化グラフェンの構造最適化や白金の固定化量を変えることで望みの用途に適した複合体を作成する研究が進められています。
 本研究で作成した白金-酸化グラフェンの複合体は、市販の白金-炭素複合体に比べて、数倍の耐久性がありました。本複合体を用いることで、高価な白金の使用量を劇的に低減できる可能性があります。
 今後、本研究成果を用いて貴金属の使用量を低減することで、レアメタル問題の解決に大いに貢献できると期待されます。

<謝 辞>
 本研究は、独立行政法人科学技術振興機構(JST)さきがけ「分子技術と新機能創出」(研究総括:加藤 隆史 東京大学教授)、科学研究費補助金(若手研究B)等の助成を受け実施しました。
特許出願状況
仁科勇太“酸化グラフェンに金属を担持させる方法及びこの方法で作成した金属-酸化グラフェン複合体”PCT/JP2013/74937,2013年9月13日,岡山大学


発表論文:Akinori Saito, Hiromi Tsuji, Iwao Shimoyama, Ken-ichi Shimizu, and Yuta Nishina,* Highly durable carbon-supported Pt catalyst prepared by hydrosilane-assisted nanoparticle deposition and surface functionalization, Chem. Commun., 2015, Accepted Manuscript; (DOI: 10.1039/C4CC10298C)

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図1 金属-酸化グラフェン複合体の合成法


図2 本方法で得られた複合体の触媒活性の持続性
触媒活性が非常に低い従来の白金-酸化グラフェン複合体(紫色のグラフ,Pt/GO with NaBH4)と市販の触媒である白金-炭素複合体(黒色のグラフ、Pt/C)。本方法で得られた白金-酸化グラフェン複合体(青色のグラフ、Pt/GO with Et3SiGO)が高い活性を維持している


図3 高温での触媒反応前後の触媒の形態観察 
本方法で得られた白金-酸化グラフェン複合体(左)は、高温での触媒反応後にもナノ粒子の構造を保持する。一方、市販の白金-炭素複合体(右)は、炭素分が即座に燃焼し、白金粒子の著しい凝集が見られる。