国立大学法人 岡山大学

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口腔内常在菌の歯周組織の免疫応答への関与を証明

2015年07月24日

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科予防歯科学分野の森田学教授らの研究グループは、米国ワシントン大学との共同研究によって、口腔内の常在菌が歯周組織(歯を支える骨などの組織)の免疫機能を高めることを世界で初めて明らかにしました。本研究成果は、米国歯周病専門雑誌「Journal of Periodontology」の7月号の電子版に掲載されました。
 口腔内には300種類以上の細菌・真菌が常在菌として生息しています。これまで、主に歯周病の病原菌に着目して研究が行われてきており、口腔内の常在菌が歯周組織の健康にどのように関わるのかは不明でした。歯周組織の免疫応答の変化は、歯周病の進行と密接な関連があります。本研究の成果は、歯周病の進行メカニズムを解明する上で、歯周病の病原菌だけではなく、口腔内の常在菌による免疫応答の変化にも着目する必要性を示した重要な知見となります。
<業 績>
 森田教授らの研究グループは、口腔内に常在菌を有するマウスと無菌状態のマウスを比較。常在菌によって歯槽骨の形態変化が促されることや、歯茎の上皮の厚さや免疫応答細胞の数が増えていることを突き止めました。
 腸内の常在菌は組織の構造や機能、免疫応答に多大な影響を与え、健康を維持する上で必要不可欠であるといわれています。口腔内においても常在菌が歯周組織の構造や機能、免疫機能に影響を及ぼすことが明らかになりました。

<背 景>
 口腔内には多くの口腔内細菌が共存しており、300種類以上の細菌・真菌が常在菌として生息しています。しかしこれまで、口腔内の常在菌が歯周組織の健康とどのように関わるのか分かっていませんでした。

<見込まれる成果>
 歯周病の進行は、歯周病の病原菌と歯周組織の免疫応答とのバランスが崩れたときに起こります。本研究の成果は、口腔内の常在菌が歯周組織の免疫機能を高めることを示唆しています。すなわち、歯周病の進行メカニズムを解明する上で、歯周病の病原菌だけではなく口腔内の常在菌による免疫応答の変化にも着目する必要があると考えられます。
 従来の考え方では、歯周病の病原菌に着目した歯周病の予防・治療が行われてきました。それに対して、本研究の成果は、口腔内の常在菌による免疫応答の変化にも着目する必要があることを示しています。歯周組織の免疫応答を適切に制御できれば、歯周病の進行を遅らせることも可能です。本研究の成果は、口腔内の常在菌による免疫応答を利用して歯周組織の健康の増進を図る方法論を確立するための基礎的な知見になることが期待されます。

<常在菌マウスと無菌マウスの歯槽骨形態の違い>
常在菌の歯槽骨の方が、無菌マウスと比較すると歯槽骨の吸収が起きています。
  常在菌の歯槽骨                無菌マウスの歯槽骨

<常在菌マウスと無菌マウスの歯肉上皮の形態の違い>
常在菌マウスの歯肉上皮の方が、免疫応答細胞が多く上皮が厚い。
  常在菌の歯肉上皮        無菌マウスの歯肉上皮

<補 足>
 口腔は多くの病原菌の侵入口であるにも関わらず、多くの病原菌は定着できません。これは、口腔には常在細菌叢が形成されていることから病原菌が排除されるためです。また森田教授らの研究グループは、口腔内の常在菌が免疫を適切に制御することで歯周組織の健康が維持されているのではないかと期待しています。


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
予防歯科学分野 講師 入江 浩一郎
(電話番号)086-235-6712
(FAX番号)086-235-6714

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