国立大学法人 岡山大学

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実用段階に入ったビッグデータの教育活用 スケジューリング技術で初めて見える子どもの実力

2013年05月29日

 近年、TポイントカードやPontaカードなどをはじめ、個人の履歴データ(縦断的データ)を大規模に収集することが可能になっています。このような縦断的ビッグデータは、個人の行動予測を行う上で、従来手に入らなかった有益な情報になり得ます。しかし、実のところ、縦断的データはまとめればまとめるほど、本来存在する行動特徴を埋没させてしまう、本質的な問題を持ちます。つまり、いくらデータを収集しても大切なものは見えてきません。この問題を“スケジューリング”という新しいアプローチで解決し、これまで見えなかった子ども一人一人の日々の学習成果の積み重ねを初めて可視化しました。今年度岡山市内の公立中学校の全校生徒を対象に学習実験を開始します。
 近年、ビッグデータが注目されていますが、その中でも個人の履歴データ(縦断データ)が大量に収集できる状況は、これまでなかったものです。特に、人間の行動(学力、嗜好)の理解や予測を目指す場合には、因果関係を検討できる縦断データは非常に高い価値を持ち、それが大量に収集できる状況は、想像を超える新しい研究とサービスを生み出す可能性を持っています。
 しかし、履歴データに含まれる「いつ」というタイミング条件は無数想定され、人によりバラバラで、かつその条件が大きな影響を持つため、縦断的ビッグデータは集めれば集めるほど、行動予測に必要な重要な情報が埋もれてしまう、原理的な問題があります。私たちは、時間次元の要因制御の問題と呼んでいますが、縦断データが大量に手に入る状況がなかったこれまでの社会科学の研究では、取り上げられることのなかった新しい問題です(資料参照)。その問題を解決せずに縦断的ビッグデータを集めても、人の行動を予測するための重要な情報は手に入らないといえます。
 私たちは、この問題を“スケジューリング”という新しいアプローチで原理的に解決し、その原理を大規模な学習支援システムに実装しました。英単語学習の検証実験では、学習者が、いつ、どの単語を、どのように何回学習し、それから何日後にテストを受けるのかという、何万という詳細なイベントの生起スケジュールを年単位で生成し、それに合わせて学習を提供し、全ての反応を回収し、スケジュール条件ごとに集約し解析し、時系列条件がそろった個人の行動(実力)変化を世界で初めて描き出しました。その結果、成績が悪い子どもも着実に実力が上昇していく様子が描き出され、それを、教師から子どもに個別にフィードバックできるようになった他、従来全く見えなかった様々な事実が明らかになり始めています。
まさに、縦断的ビッグデータは、新たな教育サービスを生み出すといえます。

※本研究は、科学研究費補助金による助成を受けています(基盤研究A、縦断的大規模調査法を基礎とした因果推定研究の創出、研究代表者:寺澤孝文、課題番号:22240079)。原理については、特許取得済み。

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<お問合せ先>
岡山大学大学院教育学研究科 教授 寺澤孝文

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