国立大学法人 岡山大学

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IgG4関連疾患とがんの関連性を解明

2015年09月17日

 岡山大学大学院保健学研究科の佐藤康晴准教授、大野京太郎大学院生、大学院医歯薬学総合研究科の吉野正教授らの研究グループは、眼領域におけるIgG4関連疾患と悪性腫瘍(がん)の関連性をサイトカインレベルで初めて解明しました。本研究成果は8月27日、英国科学誌Natureの姉妹誌「Scientific Reports」に掲載されました。
 IgG4関連疾患は全身の諸臓器に腫瘤(コブ)をつくる良性の炎症性疾患であり、統計学的にIgG4関連疾患の患者は悪性腫瘍(がん)を合併する頻度が高いということが指摘されています。佐藤准教授らは、その関連性について、各種サイトカインの定量解析を実施。両者に深い関連性があることを世界で初めて明らかにしました。
 本研究より、IgG4関連疾患と悪性腫瘍発生メカニズム解明の糸口になることが期待されます。
<背 景> 
 IgG4関連疾患は2001年に日本人によって初めて報告された比較的新しい疾患単位で、涙腺、唾液腺、リンパ節、膵臓、胆管、後腹膜など全身のさまざまな臓器に腫瘤をつくる良性の病変です。腫瘤には免疫グロブリンの一種であるIgG4を産生する細胞(IgG4陽性細胞)が異常に増加し、さらに患者血液中のIgG4濃度も上昇することが特徴です。
 近年、統計学的にIgG4関連疾患の患者は悪性腫瘍の発生率が高いということが報告されていますが、その関連性の真偽については明らかになっていませんでした。

<概 要>
佐藤准教授らの研究グループは、眼領域に発症したIgG4関連疾患(IgG4-RD)、IgG4陽性細胞を多数伴う悪性リンパ腫(IgG4(+)MZL)、IgG4陽性細胞のない悪性リンパ腫(IgG4(-)MZL)の3群をもちいて、各病変部におけるサイトカイン(IL4, IL5, IL10, IL13, TGFb)のmRNAを定量解析。その結果、IgG4-RDとIgG4(+)MZLの各種サイトカインmRNAの発現が統計学的に同じパターンであり、IgG4(-)MZLとは異なっていることが明らかになりました(図1)。すなわち、IgG4(+)MZLはIgG4-RDを背景に悪性リンパ腫(がん)が発生している可能性が強く示唆されました。

<見込まれる成果> 
眼領域IgG4関連疾患と悪性腫瘍に密接な関連性が示唆されたことで、今後、さらに各臓器におけるIgG4関連疾患と悪性腫瘍との関連性の研究が進み、さらにはIgG4関連疾患における悪性腫瘍の発生メカニズムの解明への糸口になり得る可能性も考えられます。

(図1)各種サイトカインmRNAの発現パターン
IgG4-RDとIgG4(+)MZLのサイトカインmRNAの発現が統計学的に同じパターンであり、IgG4(-)MZLとは異なっている。

<論文情報>
論文名: A subset of ocular adnexal marginal zone lymphomas may arise in associated with IgG4-related disease.
掲載誌:Scientific Reports 5: 13539, DOI: 10.1038/srep13539
著 者:Ohno K, Sato Y, Ohshima K, Takata K, Miyata-Takata T, Takeuchi M, Gion Y, Tachibana T, Orita Y, Ito T, Swerdlow SH, Yoshino T.

<補 足> IgG4関連疾患は世界的に注目されている疾患で、日本においても厚生労働省の「難治性疾患等克服研究事業」の中で研究班が設置されています。また、平成27年7月1日から施行された難病法の難病にも指定されています(指定難病300)。

発表論文はこちらからご確認いただけます。

 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科研費(C)(課題番号24591447)ならびに厚生労働省難治性疾患等克服研究事業の助成を受け実施しました。

<お問い合わせ>
岡山大学大学院保健学研究科
准教授 佐藤 康晴
(電話番号)086-235-7150
(FAX番号)086-235-7156

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