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海底活火山「若尊」からのマグマ由来CO2放出量が急増 観測以来、最高値を検出

 岡山大学大学院自然科学研究科(理)の山中寿朗准教授らの研究グループは、鹿児島湾の湾奥部、桜島沖北東海底に位置する活火山「若尊(わかみこ)」の噴気活動に由来するマグマ起源二酸化炭素の放出量が観測以来の最高値に達したことを突き止めました。
 同研究グループは2007年以降毎年同海域にて観測しており、本年7月に得られた観測値が前年の放出量の2倍を越えていることが分かりました。8月には、隣接する桜島の噴火警戒レベルが4(避難準備)へ引き上げられたことから、桜島の火山活動の活発化との関連性も疑われます。海底火山においても継続的な観測の必要性があると考えられ、今後も観測を続けていく予定です。
<概 要>
 鹿児島湾の湾奥部、桜島の北側の海域は「姶良カルデラ*1」と呼ばれる巨大カルデラが海面下に存在しています(図1)。このカルデラ火山の現在の活動中心の一つは、海域の海底に位置する活火山「若尊」であり、海底での活発な噴気活動が特徴です。海底の噴気孔から噴出したガスの一部は海面に達し、海面が沸騰しているように見えることから、古くから地元では「たぎり」と呼ばれ、漁業関係者の間で良く知られています(写真1)。
 本学大学院自然科学研究科の山中寿朗准教授、高知大、東京大、九州大、名古屋大、鹿児島大、琉球大などの研究グループ*2は2007年以降毎年、国立研究開発法人海洋研究開発機構所属の調査船「淡青丸」や「なつしま」、鹿児島大の練習船「南星丸」を用いて採取した海水試料を分析し、噴気ガス中のマグマ由来成分である二酸化炭素の放出量を計測。本年7月には、「海底火山活動のモニタリング手法確立に向けた火山ガスフラックス測定の高度化とAUV(自立型無人潜水機)との連携」の課題名の元、海洋研究開発機構所属の調査船「新青丸」によるKS-15-8次航海を実施しました。得られた海水試料を分析したところ、2014年に計測された二酸化炭素放出量(約7万トン/年)の倍以上の18万トン/年に達する放出量が算出され、これまでの最高値である2009年に得られた13万トン/年を越えていました(図2、表1)。
 調査航海が行われた翌月には、桜島で繰り返し火山性微動が観測され、大規模な噴火の恐れが強まったとの判断から噴火警戒レベルが4に引き上げられました。若尊は桜島とは異なる活火山とされていますが、桜島の活動に先立ち二酸化炭素の放出量が急増していたことが伺え、両活火山の活動に何だかの関連性があった可能性も考えられます。
 なお、桜島の噴火警戒レベル引き上げ後、桜島北部に位置する二俣港でも「たぎり」によく似た、海底からガスが湧出する現象が確認されました。このガスについても同グループによって採取と分析が行われました(写真2)。採取されたガスの化学組成は、若尊の噴気活動によって放出されているガスとは異なっており、海底に溜まった有機物に富む堆積物内での微生物による有機物の分解・発酵に由来するガスが、何だかの理由で海底から湧き出すようになったものと結論づけられました。

<今後の展望>
 海底における火山活動は、肉眼的な常時観測が行えず、活火山と認定されても実質的に継続的な観測が困難であるのが実情です。海底火山の中でも若尊は鹿児島湾内に位置し、人々の生活圏に隣接しており、噴火が起これば何らかの人的被害が起こりうることも考えられます。本研究グループは今後も、若尊の噴気活動について観測を続け、将来的には海底火山活動のモニタリング技術の確立を目指すとともに、桜島の火山活動との関連についても検証を進め、噴火予知に役立てられるよう、研究を進める予定です。

<語句説明>
*1 姶良カルデラは約2万9千年前に起こった大噴火で形成したと考えられており、その際発生した火砕流や放出された火山灰は南九州の広範に厚く堆積し、いわゆる「しらす」を形成した。
*2 本研究グループは本学の山中寿朗准教授、千葉仁教授を始め、本学大学院生の金銅和菜、奥西勇介、小林真理、高知大の岡村慶准教授、野口拓郎准教授、東京大の巻俊宏准教授、砂村倫成助教、佐藤芳紀特任研究員、九州大の石橋純一郎准教授、名古屋大の角皆潤教授、鹿児島大の山本智子准教授、琉球大の土岐知弘准教授から主に構成。





<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科(理)
准教授 山中 寿朗
(電話番号)086-251-8503
(FAX番号)086-251-7895