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脂肪肝や肝の繊維化を防ぐタンパク質「Gpnmb」を同定

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)腎・免疫・内分泌代謝内科学分野の和田淳教授、片山晶博大学院生らの研究グループは、肥満ラットの内臓脂肪組織に増加するタンパク質「Gpnmb (glycoprotein nonmelanoma protein B)」を発見。Gpnmbが脂肪肝や肝の線維化を抑制すること、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が進行した患者で血清Gpnmb値が高値であることを世界で初めて明らかにしました。本研究成果は11月19日、英国のオンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
 現在、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、世界における慢性肝疾患の主因となっており、患者数が増加しています。進行性のNASHの確定診断には、肝組織の一部を採取して検査する必要があります。
 本研究成果によって、Gpnmbを治療ターゲットとしたNAFLDの治療法の開発や、Gpnmbの血中濃度を測定するNASHの簡便な診断法の開発が期待されます。
<業 績>
 岡山大学の和田教授、片山大学院生らの研究グループは、肥満ラットの内臓脂肪組織に増加するGpnmbを同定することに世界で初めて成功しました。
 今回、本研究グループは、Gpnmbを内臓脂肪細胞、マクロファージに過剰発現させたマウスを高脂肪高蔗糖食で飼育。飼育した肥満状態のマウスと野生型マウスを比較し、脂肪肝や肝の線維化が抑制されることを突き止めました。さらに解析を進めた結果、過剰発現させたGpnmbは肝臓内のマクロファージや星細胞に存在し、カルネキシンという物質と結合することで酸化ストレス、脂肪沈着、線維化を抑制することを明らかにしました(図1)。
 また、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者の中でも特に非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に進行した患者で血清Gpnmb値が高値であることを見出しました。

 <見込まれる成果>
 近年、NAFLDは世界における慢性肝疾患の主因となっており、先進国ではその頻度は30%を越えてさらに増加しています。NASHはNAFLDの進行した状態であり、現在、確定診断のためには侵襲的な肝生検(肝組織の一部を採取して顕微鏡で観察)が必要です。
本研究で同定したGpnmbがNASHの新たなバイオマーカーとして診断を容易にする可能性があります。また、GpnmbがNAFLDに対する新たな治療ターゲットになることが期待されます。


図1. Gpnmbの作用機序(仮説)
 肝臓内のマクロファージや星細胞に過剰発現させたGpnmbだけでなく、脂肪細胞から分泌された可溶性分泌型Gpnmbも脂肪肝や肝線維化の抑制に関与している可能性があります。

<補 足>
 脂肪性肝疾患とは肝細胞に中性脂肪が沈着して、肝障害をきたす疾患の総称です。明らかな飲酒歴がない脂肪性肝疾患を「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼びます。NAFLDは、予後良好な「単純性脂肪肝」と進行性の「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」に分かれます。NAFLDの10~20%がNASHで、治療介入がない場合には5~10年で5~20%の症例が肝硬変に進行します。NASHを血液生化学検査などで診断することは、現状では困難であり、確定診断するためには肝生検(肝組織の一部を採取して顕微鏡で観察)が必要となります。

<発表論文>
Katayama A, Nakatsuka A, Eguchi J, Murakami K, Teshigawara S, Kanzaki M, Nunoue T, Hida K,
Wada N, Yasunaka T, Ikeda F, Takaki A, Yamamoto K, Kiyonari H, Makino H, Wada J. Beneficial impact of Gpnmb and its significance as a biomarker in nonalcoholic steatohepatitis. Scientific Reports 5, Article number: 16920, 2015.
doi:10.1038/srep16920

 本研究は、主に独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金(研究課題番号:新学術領域;25126716)の助成を受け実施しました。

 発表論文はこちらからご確認いただけます


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)
腎・免疫・内分泌代謝内科学分野
 教授 和田 淳
(電話番号)086-235-7235
(FAX番号)086-224-5214
(URL) //www.okayama-u.ac.jp/user/med/daisan/