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微風を送り込んだ粉体中での物体の特異的沈降現象を発見~廃棄物リサイクルに用いられる技術の改良に期待~

 岡山大学大学院自然科学研究科(工)応用化学専攻の押谷潤准教授、大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻の辻拓也准教授らの共同研究グループは、粉体が動かない程度の微弱な風を粉体に送り込み、その表面に置いた球体の運動を観察、球体が特異的な沈降現象を起こすことを世界で初めて発見しました。本研究成果は2月5日、アメリカ物理学会の国際科学雑誌「Physical Review Letters」に掲載されます(電子版は、近日中に公開予定。報道解禁設定はありません)。
 粉体の下から風を送り込み、粉体が流動化した状態(流動層粉体)での物体の浮沈現象は、乾式比重分離技術として廃プラスチックや廃非鉄金属の分別などの廃棄物リサイクルに用いられています。しかし、本技術では浮かぶモノと沈むモノといった、密度の異なる2種類の物体しか、一度に分離することができていません。
 本研究成果による特異な沈降現象を利用することができれば、密度が異なる3種類以上の物体を一度に分離できる新たな乾式比重分離技術の開発が見込まれ、廃棄物リサイクルなどの効率化が大いに期待されます。
<業 績>
 岡山大学の押谷潤准教授と佐々木俊貴大学院生、大阪大学の辻拓也准教授、東田恭平大学院生、メルボルン大学のDerek Chan教授の共同研究グループは、粉体が動かない程度の微弱な風を粉体に送り込んだ“見かけ固定層粉体”において、その表面に置いた球体の運動を観察し、以下の特異的な沈降現象を世界で初めて発見しました。
  1. 風を送り込んでいない状態の粉体(固定層粉体)とは異なり、粉体の局所的な流動化による球の沈降運動が見られた
  2. 球の密度の大小や風の強さに応じて粉体中での球の沈降の深さが変化した
  3. 球の密度が粉体のかさ密度(粒だけでなく粒間の空隙も体積として含めた粉体全体の密度)に近い場合では、密度の小さな球の方が、大きな球より深く沈んだ

<背景・原理>
 砂場の砂のような小さな粒の集まりを粉体といい、その表面に大きな物体を置いてもそのまま静止しています。しかし、粉体の下から風を送り込んだ場合、風速がある風速(=最小流動化速度)を超えると、粉体は動き出して流動化した状態(流動層粉体)になります。流動層粉体は、上昇運動する気泡の発生を伴い、その振る舞いはまるで沸騰した水のようになります。この中に異なる重さの物体を入れると、軽い物体は浮き、重い物体は沈みます。本原理を利用し、押谷准教授らは乾式比重分離技術の実用化に成功しています。
 今回、本研究グループは最小流動化速度未満の風を粉体の下から送り込んだ状態に着目しました。これまで本状態は、粉体が静止したままであったため、風を送り込んでいない状態(固定層粉体)と区別されずに取り扱われていました。しかし、乾式比重分離技術の開発において、押谷准教授らは、この微風の状態においても粉体中で物体が沈む場合があることを経験的に知っていましたが、これまで本状態に着目した研究・技術開発は皆無でした。
 本研究グループは、最小流動化速度未満の風を粉体の下から送り込んだ状態を“見かけ固定層粉体”として固定層粉体と区別し、見かけ固定層粉体中での物体の沈降を、物体(球)の密度と風速を細かく変化させて、詳細に調べました。 
図:見かけ固定層粉体中での、特異的な物体沈降現象

<見込まれる成果>
 流動層粉体中での物体浮沈現象を利用した乾式比重分離技術は、これまでに廃プラスチックや廃非鉄金属などの廃棄物リサイクルにおいて実用化を果たしています。本研究成果をうまく利用することで、これまで不可能だった密度が異なる3種類以上の物体を一度に分離でき、新たな乾式比重分離技術の開発が期待されます。

<論文情報等>
タイトル: Anomalous sinking of spheres due to local fluidization of apparently fixed powder beds
 「見かけ固定層粉体中での局所流動化による特異的球沈降」
掲 載 誌: Physical Review Letters著  者: Jun Oshitani, Toshiki Sasaki, Takuya Tsuji, Kyohei Higashida and Derek Y.C. Chan


<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科(工)応用化学専攻 准教授 押谷 潤
(電話番号)086-251-8086(FAX番号)086-251-8086

大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻 准教授 辻 拓也
(電話番号)06-6879-7317(FAX番号)06-6879-7317


<用語説明・補足>
※乾式比重分離技術:
 粉体に風を送り込み流動化した状態で、密度が異なる物体を流動層の上(表面)と下(底)に分離する技術。押谷准教授らは、流動層中での物体浮沈現象を乾式比重分離技術として利用可能であることを明らかにし、同技術に基づく分離装置を開発した。
 従来、物体の密度の違いを利用した分離技術には、水中での物体浮沈現象に基づく湿式比重分離技術が一般的に用いられているが、1)廃液処理や分離後の乾燥工程、2)装置からの液漏れ、3)比重調整剤のコスト高、4)寒冷地や水資源の貧しい地域での利用が困難という問題を抱えている。
 乾式比重分離技術は、湿式比重分離技術の代替法として開発され、廃プラスチックや廃非鉄金属などの廃棄物リサイクルにおいて実用化を果たしているが、密度の異なる2種類の物体しか一度に分離できないという技術上の制限がある。