国立大学法人 岡山大学

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主要赤痢菌6種混合標品が経口赤痢ワクチンの候補に有力 廉価なワクチン開発にむけ、インド国での臨床研究を計画

2016年02月19日

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)の三好伸一教授らの研究グループは、主要な赤痢菌6種類の加熱死菌を混合した標品を実験動物に定期的に経口投与し、不活化ワクチンとしての可能性を研究。受動免疫実験系、能動免疫実験系の実験を行い、十分な免疫誘導効果と感染防御効果があることを見いだしました。また、ヒト培養細胞を用いた試験では、細胞への毒性は認められず、サイトカインなどの免疫因子の強い産生誘導が観察されました。本標品が、経口赤痢ワクチンの候補として有力であることを証明しました。
 本研究により、汎用性の高い、廉価な赤痢ワクチンの開発と製品化が期待されます。
 今後は、アカゲザル(赤痢菌の自然宿主)を用いて、免疫誘導効果と感染防御効果を調べるほか、インド国コルカタ市での臨床研究を計画しています。
<業 績>
 三好教授らの研究グループは、主要な赤痢菌6種類(志賀赤痢菌、フレクスナー菌2a、フレクスナー菌3a、フレクスナー菌6、ボイド菌、ソンネ菌)の加熱死菌を混合した標品を調製し、マウスやモルモットなどの実験動物に定期的に経口投与して、不活化赤痢ワクチンとしての可能性を研究しました。本標品が、経口赤痢ワクチンの候補として有力であることを証明しました。
 受動免疫実験系(加熱死菌の混合物を投与した母マウスから生まれてきた乳飲みマウスを用いた実験系)と、能動免疫実験系(加熱死菌の混合物を投与した成体のモルモットあるいはウサギを用いた実験系)の両実験を実施。いずれの実験系でも十分な免疫誘導効果と感染防御効果が示されました。また、ヒト培養細胞を用いた試験では、細胞への毒性は認められず、サイトカインなどの免疫因子の強い産生誘導が観察されました。

<背 景>
 本学は文部科学省 新興・再興感染症研究拠点形成プログラムに採択され、平成19年にインド国コルカタ市のインド国立コレラおよび腸管感染症研究所内に、「岡山大学インド感染症共同研究センター(インド拠点)」を設置。インド国での(死亡)患者数が多い下痢症(コレラ、赤痢など)の制御に資する国際共同研究を行っています。その一つとして、廉価な経口赤痢ワクチンの開発研究があります。今日まで、実用化されている赤痢ワクチンはありません。

 
<見込まれる成果>
 赤痢は腸管組織が破壊され、出血をともなう下痢症であるため、その死亡者は、インド国などの途上国を中心として、年間60万人に達しています。そのため、世界保健機関は赤痢ワクチンの開発を喫緊の研究課題の一つに指定しています。今日では、多剤耐性化した赤痢菌が蔓延し、赤痢の治療や制御が困難な状況になりつつあります。
 本研究成果により、赤痢の制御が極めて困難となる前に、汎用性の高い、廉価な赤痢ワクチンの開発と製品化が期待されています。

<論文情報等>
掲 載 誌  Microbiology and Immunology, 58:463-466 (2014)
タイトル  Passive immunity with multi-serotype heat-killed Shigellae in neonatal mice
著  者  Barman S, Koley H, Nag D, Shinoda S, Nair GB, Takeda Y
doi. 10.1111/1348-0421.12164

掲 載 誌  Immunobiology, 220:1275-1283 (2015)タイトル  Heat killed multi-serotype Shigella immunogens induced humoral immunity and protection against heterologous challenge in rabbit model著  者  Nag D, Sinha R, Mitra S, Barman S, Takeda Y, Shinoda S, Chakrabarti MK, Koley H
doi. 10.1016/j.imbio.2015.07.002

<補 足>
 本研究は、文部科学省 新興・再興感染症研究拠点形成プログラム(平成19〜21年度)、文部科学省 感染症研究国際ネットワーク推進プログラム(平成22〜26年度)、日本医療研究開発機構 感染症研究国際展開戦略プログラム(平成27年度)による支援を受けました。

<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(薬)
教授 三好 伸一
(電話番号)086-251-7966
(FAX番号)086-251-7966

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