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酸化グラフェンの酸素含有量を自在に制御する方法を確立 セシウム吸着能や導電性の関係が明らかに

 岡山大学異分野融合先端研究コアの仁科勇太准教授らの研究グループは、酸化グラフェンの酸素含有量を精密に制御する方法を確立。酸素含有量によって異なる導電性、セシウム吸着能、キャパシタンス、酸化力などの物理、化学的性質を明らかにしました。本研究成果は2月25日(英国時間午前10時)、イギリスの科学雑誌「Scientific Reports」電子版に掲載されます。
 酸化グラフェンは、炭素原子と酸素原子を主として含む2次元シート上の材料で、電極、触媒、水浄化、放熱、樹脂補強材、潤滑剤などのさまざまな用途が見込まれており、実用化が最も近いナノカーボン材料の一つであると期待されています。また、合成に必要な黒鉛は、安価かつ大量に入手可能です。さらに、水に溶ける性質から既存の化学工場の設備を活用することで、大量合成できるメリットがあります。
 しかし、酸化グラフェンは濃硫酸中で強力な酸化剤を用いて合成するため、その製造条件の設定が難しく、これまでに酸素含有量を精密にコントロールすることはできていません。そのため、酸素含有量と物理、化学的特性を明らかにした研究もありませんでした。
 今回、本研究グループは、副反応を抑えることで酸素含有量を20~60%の間で、約5%毎に制御することに成功。それぞれの酸素含有量で、物理、化学的性質を明らかにしました。今後、狙いの用途に対して適切な酸素含有量の酸化グラフェンを選択することで、スーパーキャパシタ、リチウムイオン電池、触媒、潤滑剤、ポリマーコンポジット等のさらなる応用研究が進展すると期待されます。
本研究のポイント
・酸化グラフェンの酸素含有量を約5%毎に制御する製造法を確立した。
・酸素含有量を制御した酸化グラフェンについて、導電性、セシウム吸着能、キャパシタンス、酸化力の物理、化学的性質を評価した。
・狙いの用途に対して、適切な酸素含有量の酸化グラフェンを提供することで、応用研究のさらなる進展が期待される。

本研究は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)の一環として行われたものです。

<業 績>
 岡山大学異分野融合先端研究コアの仁科勇太准教授、大学院医歯薬学総合研究科博士後期課程2年の森本直樹院生らの研究グループは、副反応を抑えることで酸化剤の量と酸化グラフェンの酸素含有量が比例関係になる合成条件を確立。さらに、黒鉛を酸化して合成する方法と、高度に酸化された酸化グラフェンを還元する2通りの方法で、精密に酸素含有量を制御する酸化グラフェンの最適な製造法を確立しました。本方法は、酸素含有量を20~60%の間で約5%毎に制御することが可能で、500グラムスケールでの合成も可能です。

図1.酸素含有量の制御方法
 さらに、本研究グループは、酸化グラフェンの酸素含有量と物理、化学的性質の関係を調査。導電性、セシウム吸着能、キャパシタンス、酸化力について、図2~5の性質を明らかにしました。

図2.酸素含有量と導電性の関係
導電性は、一般に酸化が進むと低下していき、還元すると向上する。しかし、酸化しすぎることにより生じた欠陥が多いと、十分な導電性が得られない。本研究では、適度に酸化して還元することで、高い導電性を有するグラフェンを得ることに成功した。

図3.酸素含有量とセシウム吸着量の関係
セシウムの吸着は、酸化グラフェンの表面積と酸素官能基が寄与する。そのため、十分に酸化した酸化グラフェンが高い吸着量を示した。

図4.酸素含有量とキャパシタンスの関係
キャパシタンスは、表面積と導電性の両方が重要である。そのため、十分酸化して表面積を高くした後に還元して酸素含有量を20 wt%程度にしたものが優れた特性を示した。

図5.酸素含有量と酸化力の関係
酸化力は、他の材料(金属や高分子)と複合体を作製する際の重要な指標である。十分に酸化した酸化グラフェンは高い酸化力を示したが、わずかに還元するだけで酸化力は劇的に低下した。このため、他の材料の酸化を抑制したい場合は、わずかに還元させることが望ましい。

<背 景>
 酸化グラフェンは、水に溶ける性質から、溶液中の化学プロセスで大量合成が可能なため、実用化が最も近いナノカーボン材料の一つであると期待されています。同性質は、既存の化学工場の設備を活用できるという特徴を持っています。また、合成に必要な黒鉛は、安価かつ大量に入手可能な材料で、資源枯渇、自然環境への影響が小さいという特徴があります。
 現在、酸化グラフェンは、電極、触媒、水浄化、放熱、樹脂補強材、潤滑剤などのさまざまな用途が見込まれています。しかし、酸化グラフェンは濃硫酸中で強力な酸化剤を用いて合成するため、その製造条件の設定が難しく、安全かつ効率的に大量合成する方法が確立されていません。これまで、仁科准教授らの研究グループは、酸化グラフェンを安全かつ大量に製造する技術を開発し、さまざまな用途への実用化に向けて、研究を進めていました。
 今回、本研究グループは、酸化グラフェンの酸素含有量を自在に制御することに取り組みました。酸化グラフェンは、酸素含有量や酸素官能基の種類によって、電気を流す性質を持ったり、他の材料との複合化で新たな性質が付与されるなどの応用展開が見込まれています。しかし、応用展開技術確立には、酸化グラフェンの酸素含有量などを制御することが必要でしたが、これまで、精密に酸素含有量をコントロールする技術はありませんでした。また、酸素含有量と物理、化学的性質の関係を明らかにした研究もありませんでした。

<見込まれる成果>
 酸化度によってさまざまな特性を示す酸化グラフェンは、合成の再現性が低く、企業による実用化研究が進んでいません。本研究成果によって、酸化グラフェンの酸素含有量を精密に制御する製造法が確立し、その酸素含有量に応じた物理、化学的性質が明らかになりました。
 今後、スーパーキャパシタ、リチウムイオン電池、触媒、潤滑剤、ポリマーコンポジット、水浄化剤等の狙いの用途に対して適切な酸化グラフェンを選択することで、さらなる酸化グラフェンの応用用途研究が大きく進展するほか、実用化に向けた研究が本格的にスタートすると期待されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。
JST戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ)
研究領域 「分子技術と新機能創出」
       (研究総括:加藤 隆史 東京大学 大学院工学系研究科 教授)
研究課題名 炭素二次元シートの自在合成と機能創出
研究者 仁科勇太(岡山大学 異分野融合先端研究コア 准教授)
研究実施場所 岡山大学
研究期間 平成25年10月~平成29年3月

<論文情報>
掲 載 誌 Scientific Reportsタイトル Tailoring the Oxygen Content of Graphite and Reduced Graphene Oxide for Specific Applications
酸化グラフェンおよびその還元体の酸素含有量の精密制御
著  者 Naoki Morimoto, Takuya Kubo, Yuta Nishina
     森本直樹,久保拓也,仁科勇太

<お問い合わせ>
岡山大学異分野融合先端研究コア
准教授 仁科 勇太
(電話番号)086-251-8718
(FAX番号)086-251-8718