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赤外分光計測の飛躍的な感度向上に成功 -背景光を除去し、分子からの光信号のみを高いコントラストで検出-

岡 山 大 学
理化学研究所
【本研究成果のポイント】
○ 光の揺れる方向を表す偏光を制御できる人工光学材料“非対称メタマテリアル”を開発
○ 分子の光信号と背景光とを区別して、光信号のみを高いコントラストで赤外分光計測
○ 環境や医療・創薬における極微量試料の迅速かつ簡便な分光分析技術に応用可能

 岡山大学大学院自然科学研究科(工)の石川篤助教、鶴田健二教授らと、理化学研究所の田中拓男主任研究員(フォトン操作機能研究チームリーダー)の共同研究グループは、“非対称メタマテリアル”と呼ばれる人工光学材料を開発。その表面に吸着した有機分子を、数1,000個レベル(=ゼプト(10-21)モルレベル)の極めて高い感度で赤外分光計測できる技術を新たに開発しました。本研究成果は6月9日、英国の科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
 従来の赤外分光計測では、ノイズの原因となる明るい背景光の中から、試料が光を吸収する際に発生するわずかな光強度の低下を検出していました。そのため、極微量試料からの弱い信号は背景光に埋もれてしまい、本質的に高感度検出が困難でした。研究グループはこれまでに、光の性質を自在に制御できる人工光学材料“メタマテリアル”を用いて邪魔な背景光を抑制することで、赤外分光計測の感度が向上できることを発見し、数100万個(=アト(10-18)モルレベル)の有機分子の高感度検出を実証してきました。
 今回、研究グループが新たに開発した高感度化技術は、光の揺れる方向を表す偏光という性質を“非対称メタマテリアル”によって上手く制御し、分子からの光信号と背景光とを区別することで、光信号のみを高いコントラストで検出する技術です。偏光を使って光の明暗を精密に制御する同様の技術は、液晶テレビなどにも広く使われていますが、研究グループは今回これを赤外分光計測に応用することで、従来法に比べ3桁もの飛躍的な感度向上に成功しました。今後、メタマテリアル構造を最適化して背景光をさらに抑えることで、検出できる分子の数が10~100個(=サブゼプト(< 10-21)モルレベル)といった超高感度化も期待されます。
 現在、赤外分光計測技術は、温室効果ガスや有害ガスを計測する環境モニタリングや呼気中のガス成分を分析し特定疾患との因果関係を調べる呼気診断に応用が進んでいます。本研究成果によって、これらの分光分析技術の感度向上が見込まれ、環境モニタリングや呼気診断技術に貢献することが期待されます。

図1.(a)非対称メタマテリアルの模式図と(b)表面の電子顕微鏡像

図2.(a)偏光制御により分子からの光信号と背景光とを区別できる様子と(b)ポリメタクリル酸メチルの赤外スペクトル。


 本研究は、JSPS科研費(No.15KK0237)および島津科学技術振興財団研究開発助成の助成を受けて実施しました。

<論文情報等>
論文題目:“Cross-Polarized Surface-Enhanced Infrared Spectroscopy by Fano-Resonant Asymmetric Metamaterials”
     「ファノ共鳴非対称メタマテリアルを用いた直交偏光表面増強赤外吸収分光法」
掲載誌:Scientific Reports Vol.7, Article Number 3205, 2017.
著 者:Atsushi Ishikawa, Shuhei Hara, Takuo Tanaka, Yasuhiko Hayashi, and Kenji Tsuruta
DOI:10.1038/s41598-017-03545-8
論文URL:http://www.nature.com/articles/s41598-017-03545-8

<詳しい研究内容について>
赤外分光計測の飛躍的な感度向上に成功 -背景光を除去し、分子からの光信号のみを高いコントラストで検出-

<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科(工)
助教 石川 篤(いしかわ あつし)
(電話番号)086-251-8140