現代社会では機密情報を扱うことが多く、機密情報保護のために暗号技術が使われています。広く使われているRSA暗号や楕円曲線暗号は、大規模な解読実験によって安全性の厳密な評価がされてきました。IoT時代が到来した今、IoT機器などの相互認証を簡便にできたり、暗号化したままでデータ検索ができたりするなど、クラウドに適した次世代暗号技術として、楕円ペアリング暗号が注目され、IoT機器への実装が期待されています。しかしながら、その安全性について、大規模な解読実験による厳密な評価がこれまでされていませんでした。
　岡山大学大学院自然科学研究科の野上保之教授、北九州市立大学の上原聡教授、東京農工大学の山井成良教授らの研究グループは、楕円ペアリング暗号について約3000コアもの計算機を用いた大規模な解読実験を実施。2114（114ビット、10進数で35桁ほど）の大きさをもつペアリング曲線上の楕円離散対数問題の解読に成功しました。楕円ペアリング暗号を実現する楕円曲線を対象としたこの規模の解読成功は世界初です。本研究成果によって、楕円ペアリング暗号のさらに厳密な安全性の評価がなされることや、セキュリティ関連製品に搭載される暗号技術のセキュリティレベルの検討が必要になります。今回の解読攻撃成功の報告は、IoT時代を担う小型デバイスなどの情報セキュリティ確保に対して大きな一石を投じるものになります。