国立大学法人 岡山大学

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がん細胞内の鉄を制御することで幹細胞性が喪失 がんの新規治療法の確立へ

2017年11月30日

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科免疫病理学分野の大原利章助教と消化器外科学分野の二宮卓之助教(指導:藤原俊義教授)らの研究チームは、大学院自然科学研究科の妹尾昌治教授が樹立した「マウスiPS細胞由来のがん幹細胞モデル」を用いて、鉄キレート剤で細胞内の鉄(Fe)を減らすと幹細胞性が喪失することを世界で初めて発見しました。この効果は通常の抗がん剤には認められない効果です。本研究成果は10月12日、米国のがん治療の科学誌「Oncotarget」のオンライン版に掲載されました。
 私たちの生命を脅かすことのあるがんに対する治療には、さまざまな方法があります。その中でがんが治療に“抵抗”する原因として、がんの腫瘍内に幹細胞性を持つがん細胞である「がん幹細胞」が存在することが考えられています。しかし、がん幹細胞に対して、有効な治療法はありません。この問題を解決するために大原助教らは鉄に注目。鉄は生体にとって必須の微量元素ですが、過剰になると発がんを引き起こすことが知られています。がんも生体内の鉄を巧みに利用して、生存していると考えられており、がん細胞内の鉄を制御することは、がんの生存を脅かしていると考えられます。本研究成果により、がんの新規治療法になり得ると考えられます。
図1.既存の抗がん剤(5-FU, Cisplatin:上段)では幹細胞性マーカー(Nanog)の発現は高容量でも抑制されませんが、鉄キレート剤(Deferasirox, DFO:下段)では発現が抑制されます。
図2.既存の抗がん剤では、増殖性を抑えられても、がん幹細胞の抑制が難しいため、再発などを引き起こします。鉄キレート剤の使用では、増殖性とがん幹細胞性の両方の低下が認められます。


<論文情報等>論文名:Iron depletion is a novel therapeutic strategy to target cancer stem cells掲載誌:Oncotarget掲載号:Volume 8 98405-98416著 者:Takayuki Ninomiya, Toshiaki Ohara, Kazuhiro Noma, Yuki Katsura, Ryoichi Katsube, Hajime Kashima, Takuya Kato, Yasuko Tomono, Hiroshi Tazawa, Shunsuke Kagawa, Yasuhiro Shirakawa, Fumiaki Kimura, Ling Chen, Tomonari Kasai, Masaharu Seno, Akihiro Matsukawa and Toshiyoshi FujiwaraD O I: https://doi.org/10.18632/oncotarget.21846
発表論文はこちらからご確認いただけます。

<詳しい研究内容について>
がん細胞内の鉄を制御することで幹細胞性が喪失 がんの新規治療法の確立へ


<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医学系)免疫病理学分野
助教 大原 利章
(電話番号)086-235-7143
(FAX番号)086-235-7648
(URL) //www.okayama-u.ac.jp/user/byouri/pathology-1/HOME.html

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