国立大学法人 岡山大学

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女性ホルモンがオスの性機能を調節する脊髄神経回路を減衰させることを解明

2018年05月31日

 岡山大学大学院自然科学研究科(理)の坂本浩隆准教授と京都府立医科大学泌尿器科学教室の浮村理教授ら、佛教大学の研究グループは、女性ホルモンのひとつであるプロゲステロン1)が哺乳類の脊髄に存在するオスの性機能専用回路を減衰させることを明らかにしました。
 これらの研究成果は4月1日、米国の科学雑誌「Endocrinology」に掲載されました。
 これまで女性ホルモンがオスの性機能専用神経回路にどのように作用するかは分かっていませんでした。今回、オスラットの脊髄において、プロゲステロンがオスの性機能専用神経回路を抑制することを明らかにしました。さらに、培養細胞系を用いて、ヒトにおいても同様の作用を持つことも明らかにしました。
 性ホルモンと生殖行動には密接な関係があることがよく知られています。本研究成果により、性ホルモンによるオスの性機能専用神経回路の形成メカニズムが明らかとなり、今後、性差医療の発展に寄与できることが期待されます。
◆発表のポイント
・女性ホルモンのひとつである「プロゲステロン」が哺乳類の脊髄に存在するオスの性機能専用回路を減衰させることが分かりました。
・実験では、ヒトにおいても同じ作用を持つことが分かりました。
・性ホルモンと生殖行動には密接な関係があることから、今後、性差医療の発展などに寄与することが期待されます。

◆坂本准教授からのひとこと
中枢神経系(脊髄)において男性ホルモンが男性性機能専用回路の形成と機能を「促進的」に、一方、女性ホルモンは「抑制的」に作用しているという事実は驚きでした。「破れ鍋に綴じ蓋」にもある?ように男女間の関係はいつの時代も変わることなく微妙なものです。しかしながら、男女間の絶妙なバランスは健やかな社会生活をおくる上で必須であることはもはや疑う余地はありません。今回の研究成果を参考にして、今後、男女間のバランスを至高に保てるように精進していければ、と考えています。また、より詳細な分子メカニズムを解明し、臨床、畜産現場での応用が実現できるようにも頑張ります!共同研究も大歓迎です!

坂本浩隆 准教授



図1.オスの性機能専用神経回路の概略図。脊髄(腰髄)にあるガストリン放出ペプチド(GRP)系がオス優位な神経回路を構築し、勃起や射精などのオスの性機能を調節しています。


図2.発達段階におけるオスの性機能専用神経回路の性差。思春期以降、オスでは血中アンドロゲンの上昇と相関してGRPニューロン数が増加するのに対し、メスではこの時期、GRPニューロンはほとんど観察されません。本研究グループは、メスの思春期に血中で増加する女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)がGRPニューロンに作用し、性差構築が強調されると考えました。


図3.精巣がある状態のオスに女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)を慢性投与した結果、プロゲステロン投与によりGRP発現が減衰すること(上記画像:右)が明らかになりました。


■論文情報等論文名:Effects of sex steroids on the spinal gastrin-releasing peptide system controlling male sexual function in rats.
「オスの性機能を調節する脊髄神経回路系における性ステロイドホルモンの作用」
掲載誌:Endocrinology著 者: Takumi Oti, Keiko Takanami, Saya Ito, Takashi Ueda, Ken Ichi Matsuda, Mitsuhiro Kawata, Jintetsu Soh, Osamu Ukimura, Tatsuya Sakamoto and Hirotaka SakamotoD O I:10.1210/en.2018-00043

<詳しい研究内容について>
女性ホルモンがオスの性機能を調節する脊髄神経回路を減衰させることを解明


<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科(理)
理学部附属臨海実験所
准教授 坂本 浩隆
(電話番号)0869-34-5210
(FAX番号)0869-34-5211
http://www.science.okayama-u.ac.jp/~rinkai/index.html

京都府立医科大学泌尿器科学教室
教授 浮村理
(電話番号)075-251-5595
(FAX番号)075-251-5598
https://www.kpu-m.ac.jp/doc/classes/igaku/kinou/62.html

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