国立大学法人 岡山大学

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ハーフメタルの室温でのスピン性能低下の機構解明―省エネルギーで働くデバイスの開発につながる発見―

2018年12月20日

◆発表のポイント

  • 電子の磁石としての性質(スピン)を利用し省エネルギー化を可能にする技術・スピントロニクスの実現に必要な、スピンの向きのそろった電流を生み出す金属ハーフメタルは、室温で性能が低下する未解明の問題がありました。
  • ハーフメタルの室温でのスピン性能低下の機構解明に世界で初めて成功しました。
  • 室温で動作するスピントロニクスデバイスの開発への貢献が期待されます。

 大学院自然科学研究科博士後期課程3年生の藤原弘和大学院生、岡山大学異分野基礎科学研究所の寺嶋健成特任研究員、村岡祐治准教授、横谷尚睦教授らの研究グループは、東京大学物性研究所の矢治光一郎助教、辛埴教授らのグループなどと共同で、ハーフメタルの室温での性能低下の機構解明に世界で初めて成功しました。本研究成果は12月18日、米国物理学雑誌 「Physical Review Letters」のオンライン版に掲載されました。
 スピントロニクスは電子の磁石としての性質(スピン)を利用した技術であり、電子の電荷を利用したエレクトロニクス(電子工学)よりも低エネルギーで動作するため省エネルギーデバイスを実現可能な技術として注目されています。ハーフメタルはスピンの向きのそろった電流を生み出すことができるため、スピントロニクスの鍵を握る物質です。しかし、室温では性能の低下が問題となっていました。本研究では、電流を担う電子のスピンの向きを高精度で分析できる特殊な装置を用いることにより、昇温によりスピンの向きが不ぞろいになることが性能低下の原因であることを突き止めました。
 本研究により、室温で動作するスピントロニクスデバイスの開発に指針が与えられます。

 本研究は藤原君の6年におよぶ研究の成果です。世界最高品質のハーフメタル試料と世界最高性能の実験装置のコラボレーションにより可能になった研究です。研究過程では、装置の冷却水が漏れて実験室が水浸しになるなど困難もありましたが、なんとかここまでこぎつけました。本研究成果により、室温で動作するスピンデバイス開発が大きく進展することを期待しています。
横谷教授

藤原さん

■論文情報
論 文 名:Origins of Thermal Spin Depolarization in Half-Metallic Ferromagnet CrO2
掲 載 紙:Physical Review Letters
著  者:Hirokazu Fujiwara, Kensei Terashima, Masanori Sunagawa, Yuko Yano, Takanobu Nagayama, Tetsushi Fukura, Fumiya Yoshii, Yuka Matsuura, Makoto Ogata, Takanori Wakita, Koichiro Yaji, Ayumi Harasawa, Kenta Kuroda, Shik Shin, Koji Horiba, Hiroshi Kumigashira, Yuji Muraoka, and Takayoshi Yokoya
D O I:10.1103/PhysRevLett.121.257201
U R L:Origins of Thermal Spin Depolarization in Half-Metallic Ferromagnet CrO2


<詳しい研究内容はこちら>
ハーフメタルの室温でのスピン性能低下の機構解明―省エネルギーで働くデバイスの開発につながる発見


<お問い合わせ>
岡山大学 異分野基礎科学研究所
教授 横谷尚睦
(電話番号)086-251-7897
(FAX番号)086-251-7903

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