国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

昆虫体内時計の多様化を解明する糸口を発見

2013年06月27日

 本学大学院自然科学研究科の瓜生央大大学院生と富岡憲治教授の研究グループは、フタホシコオロギの体内時計が、ハエ型と哺乳類型の両方の特徴を併せ持つことを明らかにしました。ハエ型では時計遺伝子Clockが、哺乳類型ではcycleが周期的発現を示しますが、コオロギでは条件により両者が振動することを初めて明らかにしました。この研究成果は昆虫時計機構の多様化を理解する糸口となると期待されます。
 本研究成果は2013年5月27日、『Journal of Insect Physiology』誌の電子版で公開されました。
<本文>
 多様な環境に適応して生息する昆虫では時計も多様化が進んでいると考えられています。cycleClockと共に時計に関与する遺伝子の転写を活性化する重要なタンパク質をコードする遺伝子です。ショウジョウバエでは、cycleは一定レベルで発現しており、Clockは日周発現しますが、他の昆虫にはClockが定常的に発現し、cycleが周期的に発現するものもあります。後者は哺乳類に類似した特徴です。本研究では、コオロギを用いてcycleをクローニングし、その機能を解析しました。コオロギでも、cycleが活動リズムを制御するために重要な役割を演じますが、ハエと異なり日周的に発現しており、逆にClockが定常的に発現することがわかりました。ところがコオロギでは、cycleの周期的発現を阻害することにより、Clockが周期的に発現することが明らかとなりました。従って、祖先型の昆虫時計では本来、cycleClockの両方が振動する機構を持っており、そこからcycleまたはClockの一方が振動するように変化したことが推定されました。
 フタホシコオロギの体内時計はClockが振動するハエ型の要素とcycleが振動する哺乳類型の要素の両方を合わせ持つことから、コオロギの体内時計の仕組みを解明することにより、昆虫体内時計の多様化の解明につながることが期待されます。

<補 足>
 体内時計(概日時計)は、地球の自転に伴う環境の日周変化に、各種の生理機能を調和させるための機構であり、バクテリアからヒトまで進化的に保存されており、地球上で生命活動を営むための基盤となる重要な仕組みと考えられています。昆虫は熱帯から北極圏まで生息しており、その環境適応には時計機構の変化も重要と考えられています。一方、ヒトでは体内時計の変調は睡眠障害やホルモンバランス異常などの病態にも直結することから、体内時計の分子メカニズムの解明は時計そのものの理解とともに、病気の予防や治療といった社会的にも重要な課題となっています。

 本研究は日本学術振興会(JSPS)科研費 基盤研究(B)及び特別研究員奨励費の助成を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます

報道発表資料はこちらをご覧ください

<お問い合わせ>
 岡山大学大学院自然科学研究科 教授
(氏名)富岡憲治
(電話番号)086-251-8498
(FAX番号)086-251-8498

年度