国立大学法人 岡山大学

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金属状態に潜む不安定性を可視化!金属‐絶縁体スイッチの仕組み解明へ

2019年03月29日

◆発表のポイント

  • 金属状態から絶縁体へのスイッチ機能を示す二酸化バナジウム(VO2)薄膜について、その電子構造を初めて実験で決定し、可視化することに成功しました。
  • 金属状態の不安定性に結晶中の電子と格子の間の相互作用が寄与していることを明らかにしました。
  • 40年以上続くスイッチ機構の論争を鎮め、その仕組みの解明を加速することが期待されます。

 岡山大学異分野基礎科学研究所の村岡准教授、脇田高徳特任講師、寺嶋健成特任講師、横谷尚睦教授、高エネルギー加速器研究機構(KEK)の組頭広志教授、東京大学の尾嶋正治教授らの共同研究グループは、室温付近で急峻な金属‐絶縁体スイッチ機能を示すVO2薄膜について、その電子構造の実験結果を初めて示し、形状を可視化することに成功しました。加えてその形状より、VO2金属状態の不安定性が結晶中の電子と格子の間の相互作用によって引き起こされていることを明示しました。研究成果は、2018年12月17日、英国の科学雑誌「Scientific Reports」電子版に掲載されました。
 VO2の金属状態の不安定性に電子‐格子相互作用が関与していることは、電子構造の理論研究によって提案されていました。しかし、電子構造の実験結果が得られていないために提案の妥当性が判定できず、その相互作用の関与は40年以上にわたり論争の的になっていました。今回、VO2薄膜を用いた放射光角度分解光電子分光を行うことで金属状態の電子構造を可視化することに成功し、加えて、その形状が理論予想と一致していることを見いだしました。これよりVO2金属状態の不安定性に電子‐格子相互作用が関係していることを強く証拠つけました。
 本研究成果は、40年以上続く金属‐絶縁体スイッチ機構の論争を解決し、そのメカニズム解明を加速することが期待されます。また、VO2のスイッチ機能を制御する基礎原理になることが期待されます。

◆研究者からのひとこと

 10年がかりの成果です。電子構造の形状を決定したとき、そして、その形状に理論で予言されている特徴(直線部分)を見つけたときには、研究室の学生たちと大喜びしました。実験には苦労がつきものですが、そんなことも吹き飛んだうれしい瞬間でした。
村岡准教授

■論文情報
 論 文 名:Fermi surface topology in a metallic phase of VO2 thin films grown on TiO2(001) substrates
  邦題名「TiO2(001)基板上に成長させたVO2薄膜の金属相におけるフェルミ面形状」
 掲 載 紙:Scientific Reports
 著  者:Yuji Muraoka, Hiroki Nagao, Yuichiro Yao, Takanori Wakita, Kensei Terashima,Takayoshi Yokoya, Hiroshi Kumigashira, Masaharu Oshima
 D O I:10.1038/s41598-018-36281-8
 発表論文はこちらからご確認できます。
 U R L:https://www.nature.com/articles/s41598-018-36281-8

<詳しい研究内容はこちら>
金属状態に潜む不安定性を可視化!金属‐絶縁体スイッチの仕組み解明へ


<お問い合わせ>
岡山大学異分野基礎科学研究所
准教授 村岡 祐治
(電話番号)086-251-7898
(FAX)086-251-7903


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