国立大学法人 岡山大学

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歯の象牙質を作る細胞の樹立に成功

2013年06月28日

 本学大学院医歯薬学総合研究科(口腔病理学分野)の辻極秀次准教授らは、シャーレ上およびマウス生体内で象牙質を作る細胞(象牙芽細胞)の樹立に成功しました。本研究成果は2013年5月4日、米国口腔病理学会の機関誌「Journal of Oral Pathology & Medicine」の電子版に掲載されました。
  現在、細胞を用いた再生医療研究は人体への応用に向けて研究が進められています。歯科領域でも歯髄から得られた細胞やiPS細胞を用いた研究が盛んに行われていますが、これらの細胞を用いても歯を再生するのは難しいのが現状です。今後本細胞を用いて研究を進めることで、歯の再生医療研究への貢献が期待されます。
<業 績>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(口腔病理学分野)の辻極秀次准教授らのグループは、GFPラット歯髄組織から細胞を樹立し、本細胞が生体内および生体外で象牙質を形成する能力を有していることを確認しました。
 今回樹立した細胞は、シャーレ内において多量のコラーゲン基質産生とカルシウムを沈着する象牙質シートを形成します。電子顕微鏡による観察では、基質小胞を核としたカルシウム結晶の沈着する像が観察され、象牙芽細胞に類似した性格を有していることを確認しました。
 本細胞をマウスの背部皮下に移植したところ、マウスの背中に象牙質様の硬組織が形成されました。遺伝子の発現についても解析したところ、正常な歯の象牙芽細胞に特異的な遺伝子の発現が認められました。80代継代の長期間培養においても、これら細胞の性格は失われることは無く、安定して保持されました。

<見込まれる成果>
 今回樹立した細胞は、生体内および生体外で長期間安定して象牙芽細胞の性格を有しており、本細胞を用いて研究を進めることにより、歯の再生医療研究の発展に貢献できると期待されます。
 また本細胞は象牙質シートを形成する性格を有しており、齲蝕や歯周疾患などの新規治療法の開発や、歯科再生医療に関する基礎的研究への利用が可能と考えられます。

<補 足>
 歯はエナメル質、象牙質などからなり、エナメル質はエナメル芽細胞、象牙質は象牙芽細胞から作られます。現在までは歯から得られた細胞を継代すると、象牙芽細胞への分化能が低下するなどの問題があり、象牙質を作る象牙芽細胞を試験管内で長期間安定して培養することは困難でした。

 本研究は日本学術振興会(JSPS)科研費(課題番号:22791977)の助成を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます

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<お問い合わせ>
 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 口腔病理学分野 准教授
(氏名)辻極 秀次
(電話番号)086-235-6651
(FAX番号) 086-235-6654

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