国立大学法人 岡山大学

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火山噴火の際の、粘性の高い黒曜石溶岩の広がり方を明らかに 火山防災を考える上で重要な知見

2019年11月22日

岡 山 大 学
愛 知 大 学
日 本 大 学

◆発表のポイント

  • 黒曜石(流紋岩)の原料となる溶岩は粘性が高く、火山の噴火によって黒曜石溶岩が流出した際には他の溶岩と違い独特の挙動を示すため、防災にあたっては独自のリスク評価が必要とされていますが、流動する様子が直接観察された事例が非常に少なく、研究が不十分でした。
  • 約7万年前に噴出した際に固結した黒曜石溶岩を用いて流動当時の様子を探ることに成功し、間欠的な流動が長期間続く可能性を見出しました。
  • 火山防災を考える上で非常に貴重な知見となります。

 黒曜石(流紋岩)は一般に厚い溶岩を形成するため、火山の噴火によってその溶岩が流出した際には大きな災害につながるリスクを考慮しなければなりません。しかし、この溶岩が噴火時にどのように流動するかについては十分理解されていません。その最大の原因は、黒曜石溶岩が流動する様子が直接観察された事例が非常に少ないことです。黒曜石溶岩の科学的な観測事例は南米チリからの2例しかなく、2008年のチャイテン火山と2011年のコルドンカウジェ火山の噴火のみです。
 岡山大学大学院教育学研究科の宇野康司教授(地球科学領域)、愛知大学経営学部の古川邦之准教授、日本大学文理学部の金丸龍夫准教授らの研究グループは、地質学と物理学に基礎を置いた古地磁気学とよばれる手法からのアプローチで、過去に噴出して固結した黒曜石溶岩を用いた研究を行い、その流動当時の様子を探ることに成功しました。本研究の対象となった、伊豆諸島神津島で約7万年前に噴出した黒曜石溶岩はその流動時に、溶岩先端の冷え固まった部分を、内部の溶融した溶岩が突き破るようにして拡大を続けたことを明らかにしました。これは火山防災を考える上でも非常に重要な発見であると言えます。本研究成果は9月30日、 英国の科学雑誌「Geophysical Journal International」の電子版に掲載されました。

◆研究者からのひとこと

黒曜石溶岩は、流紋岩とよばれる岩石の一種で、マグマからできる岩石です。粘性の高いマグマ(ねばねばマグマ)が作る岩石の代表のような流紋岩ですが、黒曜石溶岩が噴出するとその粘性の高さにもかかわらず広範囲に流れ出ることがわかってきました。その不思議な流動のしくみを探りたいと思っています。
宇野教授

■論文情報論 文 名: Deformation of rhyolite lava crust associated with intermittent inner flow of lava: palaeomagnetic evidence 「流紋岩溶岩の断続的な内部流動に伴う溶岩外皮の変形:古地磁気学的証拠」 掲 載 紙: Geophysical Journal International著   者: Koji Uno, Kuniyuki Furukawa, Kotaro Nakai, Takuma Kamio, and Tatsuo KanamaruD O I: 10.1093/gji/ggz432U R L: https://academic.oup.com/gji/article/220/1/190/5579022


<詳しい研究内容について>
火山噴火の際の、粘性の高い黒曜石溶岩の広がり方を明らかに 火山防災を考える上で重要な知見

<お問い合わせ>
岡山大学大学院教育学研究科
教授 宇野康司
(電話番号)086-251-7641


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