国立大学法人 岡山大学

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2色のレーザーでタンパク質糖鎖の有無検出に成功

2013年07月08日

 本学大学院自然科学研究科地球生命物質科学専攻分析化学分野の金田隆教授の研究グループは、2色のレーザーを用いた蛍光検出法により、簡便にタンパク質の糖鎖の有無を判別できる方法を開発しました。本研究成果は2013年6月14日、米国の科学技術系雑誌『ELECTROPHORESIS』電子版に掲載されました。
 タンパク質は化学修飾により機能を発現し、中でも糖鎖修飾はタンパク質の物質認識に重要な役割を果たしています。開発した検出法は、酵素処理などを必要とせず、直接、タンパク質の糖鎖の有無を識別できるため、抗体医薬品などの品質評価、がんの早期発見を可能にするマーカータンパク質の探索などへの応用が期待されます。
<業 績>
 岡山大学大学院自然科学研究科分析化学分野の金田隆教授と田原彩裕美大学院生(同大学院自然科学研究科分析化学研究室)は、青色と緑色の2色のレーザーを利用して、糖鎖を持つタンパク質と持たないタンパク質を識別する方法を開発しました。
 450 nm(青色)と532 nm(緑色)のレーザー光を検出部に集光し、交互にレーザー光を照射することで、各々のレーザー光を照射したときの信号を同時に記録するシステムを作製しました。このとき、タンパク質は青色の光を照射したときに発光し、糖鎖と結合する物質(レクチン)は緑色の光を照射したときに発光する色素と結合しているため、2色のレーザーを用いることでタンパク質がレクチンと結合しているかどうかを判別することができます(図1)。
 タンパク質混合物をレクチンと反応させ、電気泳動により分離した後に、この方法で検出すると、青色レーザーと緑色レーザーによる2つの結果が同時に得られ、この2つを比較することで、どのタンパク質がレクチンと結合しているかがわかることを実証しました。

<見込まれる成果>
 生体内では様々なタンパク質が糖鎖修飾を受けており、抗体や膜タンパク質、がんのマーカータンパク質なども糖鎖修飾を受けているものがあります。したがって、タンパク質混合物の中から糖鎖修飾を受けているタンパク質を識別する技術は、医学、薬学、生物学の研究において重要な基盤技術となります。また、この技術を利用することで、抗体医薬品の品質管理やがんのマーカータンパク質の探索を迅速化できる可能性があります。


図1 従来の検出法(左)と今回開発した検出法(右)

<補 足>
 近年、糖タンパク質を計測する方法として、液体クロマトグラフ法や質量分析法が利用されていますが、これらの方法では、タンパク質を酵素処理してペプチド断片に分解し、分離する必要があり、直接、大きなタンパク質を計測することは困難です。本研究では、タンパク質分離に適したキャピラリー電気泳動という手法を利用することで、タンパク質混合試料を直接分析することが可能です。このキャピラリー電気泳動の手法に2色のレーザーを用いた新しい検出システムを組み込むことで、迅速な糖タンパク質の識別を実現しました。

 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)科研費基盤研究Bの助成を受け実施しました(14,200千円/3年)。

発表論文はこちらからご確認いただけます

発表論文:Tabara A, Kaneta T. Discrimination of glycoproteins via two-color laser-induced fluorescence detection coupled with postcolumn derivatization in capillary electrophoresis. Electrophoresis, in press; (doi: 10.1002/elps.201300149)

報道発表資料はこちらをご覧ください

<お問い合わせ>
岡山大学大学院自然科学研究科
分析化学分野 教授
(氏名)金田 隆
(電話番号)086-251-7847
(FAX番号)086-251-7847
(URL)http://chem.okayama-u.ac.jp/~analytical/home_j.html

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