国立大学法人 岡山大学

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Don’t feel the force ~植物が張力応答を抑制し、姿勢を正す仕組みを解明

2020年03月13日

◆発表のポイント

  • 生物が成長する際、体の表面に張力(表面を引き延ばす力)が発生しますが、張力に対して生物が応答する仕組みや、張力応答の果たす役割については分かっていませんでした。
  • 植物がNEK6タンパク質の働きにより張力への応答を抑えることで、体の部分ごとの成長のばらつきを緩和し、形態を整えていることを明らかにしました。
  • 張力応答を制御することで、生物の固有感覚や成長・形態を調節する簡便な方法などが開発できる可能性があります。

 生物が成長する際、体の表面に張力(フォース)が発生します。この張力が、細胞内の骨格によって認識されることで、成長が制御され、生物の形や姿勢が整います。しかし、張力応答がどのような仕組みで、どのような役割を果たしているのかは分かっていませんでした。岡山大学大学院自然科学研究科(理)の本瀬宏康准教授は、フランスENS-Lyonの高谷彰吾研究員(自然科学研究科・博士課程修了生)Olivier Hamant博士と共同で、植物が張力への応答を抑制し、自らの成長と姿勢を整えることを明らかにしました。
 張力応答が過剰になると、植物が変形して、まっすぐ伸びるはずの茎がウエーブしたり、1回転してループ状になったりすることがわかりました。これは、体の一部に加わる張力への応答が増幅された結果、最初は小さい形のゆがみが、大きく増強されて変形したためです。つまり、植物は張力応答を抑えることで、体の部分ごとの成長のばらつきを緩和し、形態を整えています。
 生物が自身の形や姿勢を認識する感覚は固有感覚(第六感)と呼ばれます。今回の研究から、張力応答を制御することで、生物の固有感覚や成長・形態を調節する簡便な方法が開発できる可能性が浮上しました。また、メタボや加齢による体の変形を抑える手法、ロボットや人工衛星の姿勢制御にも応用できると考えられます。
 研究成果は3月12日、米国の生物学雑誌「Current Biology」のArticleとして掲載されました。

◆研究者からのひとこと

 共同研究者のオリビエとは、Geoff Wasteneys教授(ブリティッシュコロンビア大学)のホームパーティ(Vancouverの美しいお家)で知り合い意気投合しました。全体のコンセプトを発展させてくれたオリビエと、自身の独創的なアイデアと精力的な研究でそつなくまとめてくれた高谷君に感謝します。
本瀬准教授

■論文情報論 文 名:Microtubule response to tensile stress is curbed by NEK6 to buffer growth variation in the Arabidopsis hypocotyl掲 載 紙:Current Biology著  者:Shogo Takatani, Stéphane Verger, Takashi Okamoto, Taku Takahashi, Olivier Hamant, Hiroyasu MotoseD O I:Microtubule Response to Tensile Stress Is Curbed by NEK6 to Buffer Growth Variation in the Arabidopsis Hypocotyl - ScienceDirect

<詳しい研究内容について>
Don't feel the force ~植物が張力応答を抑制し、姿勢を正す仕組みを解明

<お問い合わせ>
岡山大学 大学院自然科学研究科(理)
准教授 本瀬宏康
(電話番号)086-251-7857
(FAX)086-251-7857

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