国立大学法人 岡山大学

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大腸菌が遺伝子変異により病原性を獲得する過程を明らかに~病原性細菌の進化をとらえる~

2020年04月24日

◆発表のポイント

  • これまで、病原性を持たない細菌が病原性を持つ細菌へと進化するメカニズムは明らかになっていませんでした。
  • 病原性を持たない大腸菌をカイコに繰り返し感染させることにより、大腸菌が、もともと持っている遺伝子の変異によって病原性を獲得することを明らかにしました。
  • 病原性細菌の進化メカニズムを解析する新しい手法となります。

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の垣内力教授らの研究グループは、病原性を持たない大腸菌が、自身の遺伝子を変異させることにより高病原性化することを明らかとしました。
 これまで、病原性を持たない細菌が病原性を持つ細菌へと進化するメカニズムは明らかになっていませんでした。本研究では、カイコを用いて感染実験を繰り返すことにより、病原性を持たない大腸菌から病原性を持つ大腸菌を得ました。病原性を持つ大腸菌のゲノム解析を行うことにより、病原性獲得の原因となる遺伝子変異を特定しました。また、遺伝子変異により、大腸菌は宿主動物の免疫に対して抵抗することが判明しました。この遺伝子変異は患者から分離された大腸菌にも見出されたことから、自然界においても病原性細菌の進化が起きていると推察されます。
 なお、本研究成果は日本時間4月24日(金)午前3時(米国東部時間:4月23日(木)午後2時)、米国の科学雑誌「PLOS Pathogens」に掲載されました。

◆研究者からのひとこと

 キリンの首は、長い年月を経て現在の長い形に進化したと考えられていますが、その進化の過程を観察することはできません。細菌は世代交替が早いので、実験系を工夫することによって現在進行中の進化を捉えることができます。
垣内教授

■論文情報論 文 名:Non-pathogenic Escherichia coli acquires virulence by mutating a growth-essential LPS transporter(非病原性大腸菌は増殖必須なLPSトランスポーターを変異させて病原性を獲得する)
掲載紙:PLOS Pathogens著 者:垣内力1、吉海周2、若松愛3、宮下惇嗣4、松本靖彦5、藤幸知子6、加藤大7、小椋義俊8、林哲也8、磯貝隆夫9、関水和久41岡山大学大学院医歯薬学総合研究科、2東京大学大学院薬学系研究科、3バイオ産業情報化コンソーシアム、4帝京大学医真菌研究センター、5明治薬科大学、6東京大学医科学研究所、7昭和大学薬学部、8九州大学大学院医学研究院、9福島県立医科大学医療-産業トランスレーショナルリサーチセンター)D O I:10.1371/journal.ppat.1008469U R L:https://journals.plos.org/plospathogens/article?id=10.1371/journal.ppat.1008469

<詳しい研究内容について>
大腸菌が遺伝子変異により病原性を獲得する過程を明らかに~病原性細菌の進化をとらえる~



<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
 教授 垣内 力(かいと ちから)
(電話番号)086-251-7960
(URL)http://www.pharm.okayama-u.ac.jp/lab/bunsei/

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