国立大学法人 岡山大学

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小惑星「リュウグウ」が大量の有機物からなる可能性を示唆 「はやぶさ2」タッチダウン時に巻き上がった破片の色から推定

2020年06月18日

◆発表のポイント

  • 小惑星「リュウグウ」に含まれる有機物は、これまで数%程度だと考えられていました。
  • 小惑星探査機「はやぶさ2」のタッチダウン時に巻き上がった破片の色に着目し、解析を行ったところ、リュウグウが含む有機物は約60%であるという推定が導かれました。
  • この推定が正しければ、リュウグウはかつて氷からなる彗星の核(氷母天体)であり、氷が昇華し失われるにつれて有機物と周回中に捕獲された岩塊が濃集し、ソロバン玉形状の瓦礫集合体へと進化したと考えられます。
  • 11~12月に探査機「はやぶさ2」が持ち帰る試料を詳細に解析することによって、今回の推定を検証します。太陽系有機無機物質の新たな進化モデルを提示できる可能性があります。

 岡山大学惑星物質研究所の中村栄三教授らの研究グループPML (The Pheasant Memorial Laboratory) は、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」にタッチダウンした直後に小惑星表面から巻き上がった破片の色(アルベド)が表裏で異なることに着目し、解析を行ったところ、リュウグウが含む有機物は約60%であることが導かれました。望遠鏡と探査機による分光観測からは、リュウグウは数%の有機物を含む炭素質コンドライトに似た小惑星だと想定されていましたが、有機物量がこの想定をはるかに超えるという今回の結果は、リュウグウが彗星だったことを示唆します。つまり、彗星だったリュウグウは、太陽近傍を周回する間に氷を失い、有機物の濃縮と岩石の濃集が促進された結果、瓦礫状かつソロバン玉状の構造になったと推定できます。
 今回導かれたリュウグウの新たな姿「三朝モデル」は、「はやぶさ2」が今年11~12月に持ち帰る試料を解析することによって検証が可能です。「はやぶさ2」プロジェクトにおいてJAXA・宇宙科学研究所と連携協定を締結した岡山大学惑星物質研究所は、フェーズ2キュレーション施設として初期総合解析を担当します。従来の想定を超えた発見により、太陽系科学にパラダイムシフトが起きることが期待できます。
 本研究成果は6月15日、科学誌「Astrobiology」のオンライン版に掲載されました。

◆研究者からのひとこと

この研究の発端は、You Tubeで「はやぶさ2」のタッチダウンの動画を何度も見ている最中の思いつきです。従って、論文掲載料以外、研究費は使っていません。実際に回収試料を分析することによって、自分が立てた仮説を自分たちの手で検証できることが科学者としての最高の喜びです。
中村教授

■論文情報論 文 名:The Albedo of Ryugu: Evidence for a High Organic Abundance, as Inferred from the Hayabusa2 Touchdown Maneuver. (小惑星リュウグウのアルベド:「はやぶさ2」のタッチダウン時に巻き上がった破片から推定される有機物量)掲 載 紙:Astrobiology著  者:Christian Potiszil1、田中亮吏1、小林桂1、国広卓也1、中村栄三1
1The Pheasant Memorial Laboratory (PML)、岡山大学惑星物質研究所
D O I:https://doi.org/10.1089/ast.2019.2198U R L:https://pml.misasa.okayama-u.ac.jp/home.php


<詳しい研究内容について>
小惑星「リュウグウ」が大量の有機物からなる可能性を示唆
「はやぶさ2」タッチダウン時に巻き上がった破片の色から推定



<お問い合わせ>
鳥取県東伯郡三朝町山田827
岡山大学惑星物質研究所 
教授 中村 栄三
Tel: 0858-43-3745

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