国立大学法人 岡山大学

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風邪の治療における抗菌薬の実際の使用状況を明らかに

2020年06月26日

◆発表のポイント

  • これまで十分に明らかにされていなかった風邪の治療における抗菌薬の実際の使用状況を明らかにしました。
  • 2013~2015年の日本国内における865万回の風邪による外来受診を分析した結果、風邪による受診の半数以上に抗菌薬が処方され、そのうち、第一選択薬であるペニシリン系抗菌薬以外の広域抗菌薬が90%以上を占めていました。
  • 年代や疾患ごとに異なる抗菌薬の使い方をされていることも明らかにしました。

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の小山敏広助教と大学院ヘルスシステム統合科学研究科の狩野光伸教授は、これまで十分に明らかにされていなかった風邪の治療における抗菌薬の実際の使用状況を明らかにしました。本研究は複数の研究機関と医療機関の研究者(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科総合内科学 萩谷英大准教授、札幌医科大学 樋之津史郎教授、徳島大学病院 座間味義人准教授、徳島文理大学 四宮一昭教授、岡山大学病院 千堂年昭教授、北村佳久准教授、建部泰久氏、田坂健氏、大島礼子氏、同講座 田中啓祥助教、寺谷祐亮氏、ヘルスシステム統合科学研究科 舩橋智子氏)との共同研究において実施されました。
 急性の気道感染症は一般に「風邪」、「感冒」などとよばれ臨床的に頻度の高い疾患ですが、その大半はウイルス性であり抗菌治療は必ずしも必要とはされていません。一部の気道感染症は細菌感染症によって引き起こされますが、その治療には狭域抗菌薬であるペニシリン系抗菌薬が第一選択薬として推奨されています(1)
 本研究では、2013~2015年の日本国内における865万回の風邪による外来受診を分析しました。その結果、風邪による受診の半数以上に抗菌薬が処方され、そのうち、第一選択薬であるペニシリン系抗菌薬以外の広域抗菌薬が90%以上を占めていました。また、年代や疾患ごとに異なる抗菌薬の使い方をされていることも明らかにしました。本研究成果は、日本の感染症・化学療法領域における国際医学誌「Journal of Infection and Chemotherapy」のオンライン版に3月12日に掲載されました。

◆研究者からのひとこと

今回の研究は多様な研究者の協力により、データサイエンスという新たな武器で医療ビッグデータを臨床的な視点で分析した結果として得られたものと思います。今後も、さまざまな分野で新たな視点からの知見を提供し続けていきたいと思います!
小山助教
本研究は、最も身近な感染症である「風邪」における抗菌薬の使用状況を解析したものです。「熱が出て病院に行ったら抗生物質をもらった」という経験は誰もが記憶にあると思いますが、最近の研究によりその多くが不要ということが分かってきました。深刻化する薬剤耐性菌の問題に直面する今、本研究結果が医療者・患者双方にとって「風邪」における抗菌薬の適正使用を考えるきっかけになることを期待しています。
萩谷准教授
今回の研究のように蓄積されたデータの利活用による新しい知見はこれからも増えていくものと思います。今後は感染症のみならず、さまざまな分野においてエビデンスを発信できることを期待します。
狩野教授

■論文情報論文名:Antibiotic prescriptions for Japanese outpatients with acute respiratory tract infections (2013–2015): A retrospective Observational Study.掲載紙:Journal of Infection and Chemotherapy著  者:Toshihiro Koyama, Hideharu Hagiya, Yusuke Teratani, Yasuhisa Tatebe, Ayako Ohshima, Mayu Adachi, Tomoko Funahashi, Yoshito Zamami, Hiroyoshi Y. Tanaka, Ken Tasaka, Kazuaki Shinomiya, Yoshihisa Kitamura, Toshiaki Sendo, Shiro Hinotsu, Mitsunobu R. Kano.D O I:https://doi.org/10.1016/j.jiac.2020.02.001U R L:Antibiotic prescriptions for Japanese outpatients with acute respiratory tract infections (2013–2015): A retrospective Observational Study - ScienceDirect

<詳しい研究内容について>
風邪の治療における抗菌薬の実際の使用状況を明らかに


<お問い合わせ>
岡山大学大学院ヘルスシステム統合科学研究科
教授 狩野光伸

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
助教 小山敏広
(電話番号)086-235-6585

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