国立大学法人 岡山大学

LANGUAGE
ENGLISHCHINESE
MENU

抗がん剤不要で自然に治る “がん” EBウイルス陽性粘膜皮膚潰瘍の病理学的特徴が明らかに

2020年07月01日

◆発表のポイント

  • がんの一種であるEBウイルス陽性粘膜皮膚潰瘍(EBVMCU)は、病理検査で悪性リンパ腫と区別ができませんが、悪性リンパ腫とは異なり、抗がん剤治療が不要で自然に治ることが特徴です。
  • 今回の研究では、世界で初めて、日本人におけるEBVMCUの病理学的および遺伝子異常の特徴を明らかにしました。
  • 本研究成果によって、EBVMCUが広く医療人に認識され、さらに適切な診断と治療が行われるようになることが期待されます。

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)の池田知佳大学院生、岡山大学大学院保健学研究科(病理学)の佐藤康晴教授らの研究グループは、日本人におけるEBウイルス陽性粘膜皮膚潰瘍(EBVMCU)の病理学的および遺伝子異常の特徴を明らかにしました。本研究成果は6月19日、米国カナダ公式病理学会雑誌「Modern Pathology」にOriginal articleとして掲載されました。
 EBVMCUは、関節リウマチで治療薬メトトレキサートを内服している患者さんの口の中に起こりやすく、難治性の潰瘍を作る病気です。潰瘍の見た目は“がん”のようで、さらに病理検査でも高悪性度の悪性リンパ腫との鑑別が困難です。しかし、この病気は悪性リンパ腫とは異なり、抗がん剤治療を必要としません。内服しているメトトレキサートを休止するだけで自然に治ります。病理学・遺伝学的には悪性リンパ腫との鑑別は困難で、診断には関節リウマチなどの自己免疫疾患に対するメトトレキサートなどの免疫抑制剤による治療歴などが、この病気の診断に最も重要な鍵となります。
 本研究成果が広く医療人に知られることで、不必要な抗がん剤治療を避け、適切な診断と治療が行われることが期待されます。

◆研究者からのひとこと

この病気は、高齢化とともに患者数が増加傾向にあります。そのため、適切な診断を行い、不要な抗がん剤治療を避けるためにも、リウマチ診療に携わる医師、口腔領域の診療に携わる耳鼻科咽喉科医師や歯科医師、病理検査に従事する病理医や臨床検査技師にも広く知ってもらえることを期待します。
佐藤教授

■論文情報論 文 名:Clinicopathological analysis of 34 Japanese patients with EBV-positive mucocutaneous ulcer.掲 載 紙:Modern Pathology著  者:Ikeda T, Gion Y, Sakamoto M, Tachibana T, Nishikori A, Nishimura MF, Yoshino T, Sato Y.D O I:10.1038/s41379-020-0599-8U R L:https://www.nature.com/articles/s41379-020-0599-8


<詳しい研究内容について>
抗がん剤不要で自然に治る “がん”
EBウイルス陽性粘膜皮膚潰瘍の病理学的特徴が明らかに



<お問い合わせ>
岡山大学大学院保健学研究科(病理学)
教授 佐藤康晴
TEL:086-235-6884
FAX:086-235-7156

年度