国立大学法人 岡山大学

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日本国内におけるクロイツフェルト・ヤコブ病の罹患率・死亡率動向を解明

2020年09月23日

◆発表のポイント

  • 過去10年間(2005-2014年)の死亡統計データと厚生労働省の研究班データより、日本国内におけるクロイツフェルト・ヤコブ病の罹患率・死亡率動向を算出しました。
  • クロイツフェルト・ヤコブ病の罹患率・死亡率が年々増加傾向であることを明らかにしました。
  • 特に70歳以上の高齢者における罹患率の増加傾向が明らかに高いことを解明し、社会の高齢化が進む中、国内のクロイツフェルト・ヤコブ病がさらに増加する可能性を明らかにしました。

 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の萩谷英大准教授及び小山敏広助教らの研究グループは、これまで未解明であった日本国内におけるクロイツフェルト・ヤコブ病の罹患率・死亡率の動向を、厚生労働省の研究班データおよび死亡統計データに基づき明らかにしました。本研究は、同研究科総合内科学講座の大塚文男教授指導の下、同講座の西村義人非常勤講師、岡山市立市民病院の原田洸医師との共同研究で行われました。
 クロイツフェルト・ヤコブ病は、脳に異常なタンパク質が沈着し神経細胞の機能が障害されるプリオン病の代表です。1990年代後半にいわゆる狂牛病と呼ばれた牛海綿状脳症とクロイツフェルト・ヤコブ病の関連が示唆されたことで一躍世間の注目を集めましたが、ヤコブ病の中で最も多いのは原因不明の孤発型で、急速に進行する認知症としての側面を持ちます。現在の日本におけるヤコブ病の罹患率・死亡率がどの程度増加しているのかは分かっていませんでした。
 本研究グループは、過去10年間(2005-2014年)における日本国内のクロイツフェルト・ヤコブ病の罹患者数、死亡者数を調査し、統計学的に解析し、諸外国の動向と比較しました。その結果、罹患率および死亡率は70歳以上の高齢者で際立って増加傾向であることが分かりました。また、その増加傾向は諸外国を上回っていることが明らかとなり、今後の更なる高齢化の進行に伴い国内のクロイツフェルト・ヤコブ病がさらに増加する可能性が示唆されました。
 本研究成果は、日本時間9月23日(水)18:00(英国時間10:00)に英国の科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。

◆研究者からのひとこと

クロイツフェルト・ヤコブ病は稀な疾患ですが、疫学や認知症対応といった公衆衛生の側面からの考察を行ったことで意義深い論文となったと思います。これからも重要な課題に関する研究を行っていきたいと考えています。
西村医師
現状の深い理解はよりよい医療への第一歩です。これからも、ヘルスケアデータを活用し、データサイエンスという新たな武器でよりよい医療のための科学的知見を世界に発信していきたいと思います。
小山助教
高齢化に伴い、疾患の“Social Burden(社会的負担)”が変化しています。私たちは、今後もデータ解析を通して、日本や世界が直面していく疾病構造の変化を追いかけ、保健医療分野におけるSDGsに貢献していきたいと考えています。
萩谷准教授

■論文情報論 文 名: A nationwide trend analysis in the incidence and mortality of Creutzfeldt–Jakob disease in Japan between 2005 and 2014掲 載 紙:Scientific Reports著  者:Yoshito Nishimura, Ko Harada, Toshihiro Koyama, Hideharu Hagiya, Fumio OtsukaD O I:10.1038/s41598-020-72519-0

<詳しい研究内容について>
日本国内におけるクロイツフェルト・ヤコブ病の罹患率・死亡率動向を解明

<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
総合内科学 准教授 萩谷 英大
(電話番号) 086-235-7342
(FAX) 086-235-7345

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