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キラーウイルスの仲間に感染性有り

 本学資源植物科学研究所植物・微生物相互作用グループの鈴木信弘教授らの研究グループは、これまで感染性がないと信じられてきたキラーウイルスの仲間の感染性を世界で初めて証明しました。本研究成果は、『Journal of Virology』の2013年6月号電子版に掲載されました。
 本研究成果が現代ウイルス学の命題である宿主域決定の仕組みや、宿主の自然免疫とウイルスのせめぎ合いの解明に大きく貢献することが期待されます
<業 績>
 意外なことですが、感染させることが困難な感染性が証明されていないウイルスが多く存在します。酵母に感染し、感染していない酵母を殺してしまうキラーウイルスも、未だ粒子の感染性は認められていません。その仲間のウイルスであるヴィクトリウイルスも然りです。従って、これらウイルスの宿主域やウイルス間、ウイルス-宿主間の相互作用に関する知見は乏しいのが現状です。
 岡山大学資源植物科学研究所、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所(盛岡市、つくば市)の共同研究グループ5人は、植物病原糸状(子のう菌)である白紋羽病菌Rosellinia necatrixから分離したキラーウイルスの仲間のRosellinia necatrix victorivirus 1(RnVV1)の粒子接種法を確立しました。
 本法により、白紋羽病菌に加えてクリ胴枯病菌(菌類ウイルス研究のモデル糸状菌)にRnVV1を持続感染させることに成功しました。また、ヴィクトリウイルスが宿主の自然免疫であるRNAサイレンシングの標的になることを世界で初めて明らかにしました。

<見込まれる成果>
 鈴木教授らの一連の研究で、従来感染性が無いと思われていたキラーウイルスの感染性を証明し、宿主域を拡大することに世界で初めて成功しました。ウイルスと宿主の間の攻防もモデル宿主糸状菌を使って解析が可能となりました。カビを含む真核生物に広く保存されているRNAサイレンシング(短いRNAが関与する配列特異的遺伝子発現抑制機構)は、ウイルスに対する自然免疫機構として作用します。通常、植物ウイルスはRNAサイレンシングを抑制する蛋白質を武器にして反撃します。しかし、菌類ウイルスではどういう反撃手段を有するかなど、不明な点が多くあります。今回、開発した系は、植物/ウイルス、動物/ウイルスに次ぐ第3極として宿主/ウイルス相互作用の解析に大きく貢献すると期待されます。

本論文は掲載誌のスポットライトで取り上げられました

<補 足>
 キラーウイルスが属するトティウイルス科(Totiviridae)は、酵母、糸状菌、原生動物に感染するウイルスをメンバーに持ちます。構成員に共通の特徴として、球状粒子(直径~40 nm)に単一2本鎖RNAゲノムを包含し、通常外被タンパク質と複製酵素を並列にコードすることが上げられます。そのうち、糸状菌を宿主とする構成員はヴィクトリウイルス属に分類され、数多くの種が報告されています。
 白紋羽病菌は、非常に広い宿主範囲(400種以上)をもつ土壌に生息する糸状菌です。日本では特に多年生の果樹(日本ナシ、リンゴ、ブドウなど)で大きな被害が出ています。

本研究は、生物系特定産業技術研究支援センター イノベーション創出基礎的研究推進事業(シーズ開発型研究)の助成を受け実施しました。

発表論文はこちらからご確認いただけます

発表論文:Chiba S, Lin YH, Kondo H, Kanematsu S, Suzuki N.: A Novel Victorivirus from a Phytopathogenic Fungus, Rosellinia necatrix, Is Infectious as Particles and Targeted by RNA Silencing. J Virol. 2013 Jun;87(12):6727-38. (doi: 10.1128/JVI.00557-13)

報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
 岡山大学資源植物科学研究所
 植物・微生物相互作用グループ 教授
(氏名)鈴木信弘
(電話番号)086-434-1230
(FAX番号)086-434-1232
(URL)http://www.rib.okayama-u.ac.jp/pmi/index-j.html