国立大学法人 岡山大学

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マクロファージの働きを抑えて骨肉腫の増殖を抑制!~希少がんの新たな治療法の創出へ~

2021年06月15日

◆発表のポイント

  • 骨肉腫は、さまざまなサイトカイン(液性因子)を分泌し、腫瘍の増殖を助ける「腫瘍随伴マクロファージ」を作り出していることが明らかになりました。
  • 「腫瘍随伴マクロファージ」の数や働きを抑える治療薬で、骨肉腫の成長を抑えることができることを発見しました。
  • 将来、骨肉腫の新しい治療法に発展することが期待されます。

 岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)・岡山大学病院整形外科の藤原智洋助教と尾崎敏文教授、同消化器外科の田澤大准教授と藤原俊義教授、アメリカのメモリアルスローン癌センターのジョン・ヒーリー(John Healey)医師、ホスピタル・フォー・スペシャル・サージェリーのエド・パードゥー(Ed Purdue)博士らの国際共同研究グループは、腫瘍内のマクロファージを狙った治療法により、骨肉腫の増殖抑制効果を発見しました。
本研究成果は、6月4日、米国の科学雑誌『Molecular Cancer Therapeutics』で公開されました。
 骨肉腫の患者の生存率は、約40年前に導入された抗がん剤治療により飛躍的に向上しました。その後、腫瘍細胞そのものを狙うさまざまな薬剤の開発が行われてきましたが、当初から用いられている薬剤の有効性を超えるものは発見されていません。今回新たに発見された治療法の効果は、腫瘍細胞の周囲のマクロファージの働きを抑えることで、腫瘍細胞の成長を促すシグナルを減少させたり、腫瘍細胞を攻撃する免疫細胞を増やすことにより見出されました。今後、これまで用いられてきた治療法と組み合わせることで、将来的に骨肉腫患者の生存率を改善できる新しい治療法の実現が期待されます。

◆研究者からのひとこと

骨肉腫の患者は10代が多く、多感な青春期に肺などに転移して命を落とすこともあります。この40年間、効果のある新薬がでてきていませんでしたが、この研究成果がその現状を打開するきっかけになることを期待しています。私がアメリカ留学中に没頭した研究であり、骨肉腫の成長を抑える効果を発見したときは、将来の治療薬への発展を期待し、胸が熱くなりました。
藤原助教

■論文情報
論文名:CSF-1/CSF-1R Signaling Inhibitor Pexidartinib (PLX3397) Reprograms Tumor-Associated Macrophages and Stimulates T-Cell Infiltration in the Sarcoma Microenvironment
邦題名「CSF-1/CSF-1R阻害薬であるペキシダルチニブ(PLX3397)は、肉腫の微小環境において腫瘍随伴マクロファージを再編成しT細胞の浸潤を促進する」

掲載紙:Molecular Cancer Therapeutics
著 者:Tomohiro Fujiwara, Mohamed A. Yakoub, Andrew Chandler, Alexander B. Christ, Guangli Yang, Ouathek Ouerfelli, Vinagolu K. Rajasekhar, Aki Yoshida, Hiroya Kondo, Toshiaki Hata, Hiroshi Tazawa, Yildirim Dogan, Malcom A.S. Moore, Toshiyoshi Fujiwara, Toshifumi Ozaki, Ed Purdue, John H. Healey
DOI:10.1158/1535-7163.MCT-20-0591
URL:https://mct.aacrjournals.org/content/early/2021/06/04/1535-7163.MCT-20-0591

<詳しい研究内容について>
マクロファージの働きを抑えて骨肉腫の増殖を抑制!~希少がんの新たな治療法の創出へ~


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)
助教 藤原 智洋
(電話番号)086-235-7273
(FAX)086-223-9727

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