国立大学法人 岡山大学

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ご先祖様だと信じてきたもの、実は叔母のような関係?カエル抗菌ペプチド「ボンベシン」と哺乳類神経ペプチド「ガストリン放出ペプチド」とは異なる進化系譜だった

2021年07月29日

岡  山  大   学
国立遺伝学研究所 
近  畿  大   学
神 奈 川 大 学

◆発表のポイント

  • カエル抗菌ペプチドであるボンベシン1)と、哺乳類で様々な自律神経機能を担う神経ペプチド「ガストリン放出ペプチド(GRP)」は、脊椎動物の先祖において1つの祖先遺伝子が2つに分かれた後、別々の進化を遂げたものであることを明らかにしました。
  • ネッタイツメガエル(ゼノパス)のGRPとその受容体は、哺乳類と同様に「脳-腸ペプチド」系であることがわかり、四肢動物 におけるGRP系の普遍性が示されました。
  • ゼノパスは普遍的なGRP系のモデルとなり得ると同時に、カエル特有の抗菌ペプチドであるボンベシンについて、その作用メカニズムを知ることにより有用化合物として利用できるかもしれません。

  岡山大学学術研究院自然科学学域(理学部附属牛窓臨海実験所)の坂本浩隆准教授と濱田麻友子准教授、情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所、近畿大学、神奈川大学の共同研究グループは、生理活性物質であるボンベシンファミリーペプチドの進化の道筋とガストリン放出ペプチド(GRP)の普遍性を明らかにしました。これらの研究成果は6月25日、自然科学系の国際誌「Scientific Reports」(Springer Nature)に掲載されました。
 カエルにおいて抗菌ペプチドとして働く「ボンベシン」と、哺乳類でオスの性機能や概日リズム、かゆみ感覚の伝達など多くの自律神経機能に関与することが知られている神経ペプチドの「GRP」は、非常に似た構造をしているため、ボンベシンからGRPが進化してきたと考えられてきました。しかしながら、これらふたつの遺伝子は独自の進化を遂げてきたものであることが明らかになりました。また、四肢動物におけるGRPの祖先的な役割を明らかにするため、ネッタイツメガエル(ゼノパス)のGRPとその受容体の発現を調べたところ、哺乳類と同様に「脳-腸ペプチド」系であることがわかり、その普遍的な役割が示されました。
 本研究によって、両生類でも普遍的なGRP系が存在していることが明らかになり、生体において重要な役割を果たすGRP系の研究モデルとなることが期待されます。また、カエル特有の抗菌ペプチドであるボンベシンはその作用メカニズムを知ることにより、有用化合物として利用できるかもしれません。

◆研究者からのひとこと

ご先祖様だと信じてきたカエルのボンベシンが、哺乳類のGRPにとっては実は叔母のような関係だったのです!私には大きな発見でとても興味深いものでしたが、言わば重箱のスミをつついたような研究かも?という思いもあり、学術誌に掲載されるまでは苦難の連続でした。しかしながら、本発見は、四肢動物の陸上進出における生理活性物質の分子進化、および脳-腸ペプチドの進化的意義を知る上でも極めて重要です。このような些細な発見に感心できること、またその驚きを人々に分かりやすく伝えていくことが、“まさに研究の醍醐味ではないか”と、自分を褒めてあげたいです。
坂本准教授

■論文情報
論文名: The gastrin-releasing peptide/bombesin system revisited by a reverse-evolutionary study considering Xenopus
(ゼノパスを用いた逆系統進化学的研究によるガストリン放出ペプチド/ボンベシン系の再検討)

掲載誌:Scientific Reports
著者:Asuka Hirooka, Mayuko Hamada, Daiki Fujiyama, Keiko Takanami, Yasuhisa Kobayashi, Takumi Oti, Yukitoshi Katayama, Tatsuya Sakamoto & Hirotaka Sakamoto
DOI: 10.1038/s41598-021-92528-x
発表論文はこちらからご確認できます。

<詳しい研究内容について>
ご先祖様だと信じてきたもの、実は叔母のような関係?カエル抗菌ペプチド「ボンベシン」と哺乳類神経ペプチド「ガストリン放出ペプチド」とは異なる進化系譜だった


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院自然科学学域(理学部附属牛窓臨海実験所)
准教授 坂本 浩隆
准教授 濱田 麻友子
(電話番号) 0869-34-5210 (FAX番号) 0869-34-5211

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