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植物特有のミトコンドリア遺伝子調節機構を解明

 岡山大学資源植物科学研究所の平山隆志教授と理化学研究所環境資源科学研究センターの大谷美沙都研究員らの研究グループは、植物特有のミトコンドリア遺伝子発現調節機構を世界で初めて解明しました。本研究成果は2013年8月5日に『Nature Communications』に発表されました。
 呼吸の場として知られる細胞内小器官のミトコンドリアは、最近の研究からストレス応答、老化、エネルギー調節、細胞分裂など、細胞の主要な機能に密接に関わっていることが明らかとなっています。このミトコンドリアは、数十の遺伝子をコードする独自のゲノムを持っていますが、その発現調節機構は多くの生物で不明です。今回、植物においてその遺伝子発現調節機構のひとつを明らかにしました。
<業績>
 岡山大学、理化学研究所などの共同研究グループは、シロイヌナズナのpolyA鎖付加酵素AGS1およびpolyA鎖分解酵素AHG2が協調してミトコンドリアmRNAのpolyA鎖状態を調節し、ミトコンドリア遺伝子の発現を制御していることを、世界ではじめて明らかにしました。
 平山教授らの研究グループは、数年前にmRNAのpolyA鎖を分解する酵素であるAHG2の機能が低下すると、植物のストレス耐性に必要な植物ホルモンのアブシジン酸やサリチル酸に対する応答が異常になることを発見しました。今回の研究では、分子遺伝学的解析や網羅的転写物解析などを通して、相反する活性を持つAHG2とAGS1が協調してミトコンドリアmRNAのpolyA鎖を直接調節し、ミトコンドリア遺伝子の発現を制御していることを明らかにしました。また、この協調関係が崩れるとミトコンドリアmRNAのpolyA鎖状態とともにミトコンドリアの正常な働きが失われ、植物ホルモンへの応答にも決定的な影響を与えることが明らかになりました。



 ミトコンドリアmRNAの制御機構は不明な点が多く、ほとんどの生物種でまだ謎のままでしたが、本研究によりその機構のひとつが明らかになりました。さらに、PARNと呼ばれるAHG2と同様のpolyA鎖分解酵素は、他の生物種では細胞質または核で機能していることが示されていますが、今回の研究で植物ではミトコンドリアで機能していることが明らかになりました。これにより、植物は特有のミトコンドリア遺伝子発現制御機構を持っていることがわかりました。
 近年、ミトコンドリアは、古くから知られている呼吸や代謝機能以外に様々な細胞機能に深く関わっていることが示されています。例えば動物では、エネルギー消費調節、老化、細胞分裂、細胞死、さらには神経細胞の樹状突起の分岐に関わっていることが報告されており、細胞機能全般において重要な役割を担っていると考えられています。植物においてもストレス応答などに関与することが示唆されていますが、その詳細は明らかになっていません。本研究では、ストレス耐性に関わる植物ホルモンの応答とミトコンドリア機能との関連が明白に示され、この研究で得られた変異株や遺伝子を用いることで、今後植物のミトコンドリア機能の解明が加速されることが期待されます。また、本研究の成果を用いて、植物ミトコンドリアの遺伝子発現調節法の開発も期待されます。
 この成果は、2013年8月5日付の『Nature Communications』に発表されました。

<用語解説>
polyA鎖:細胞内にあるほとんどのRNA分子の3’末端に付加される構造で、これによりRNAの安定性が調節されていると考えられています。遺伝情報のコピーであるmRNAの安定性は遺伝子発現に大きく影響することが明らかになっています。

アブシジン酸:植物ホルモンの一種で、主に種子の休眠、発芽の調節、乾燥、塩や低温などのストレス応答に関わっています。

サリチル酸:植物ホルモンの一種で、主に病原菌に対する防御応答に関わっています。

<原論文情報>
Takashi Hirayama, Takakazu Matsuura, Sho Ushiyama, Mari Narusaka, Yukio Kurihara, Michiko Yasuda, Misato Ohtani, Motoaki Seki, Taku Demura, Hideo Nakashita, Yoshihiro Narusaka, Shimpei Hayashi. “A poly(A)-specific ribonuclease directly regulates the poly(A) status of mitochondrial mRNA in Arabidopsis”. Nature Communications, doi: 10.1038/nocomms3247.

<追記>
本研究は、文部科学省の科学研究費補助金(新学術領域研究「RNA制御学」、基盤研究B)を受け実施されました。

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<お問い合わせ>
岡山大学 資源植物科学研究所 平山隆志
(電話番号) 086−434−1213
(FAX 番号) 086−434−1213

理化学研究所 環境資源科学研究センター 大谷美沙都