国立大学法人 岡山大学

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食道癌内視鏡治療の新機器を開発 有用性証明

2013年08月19日

 岡山大学病院光学医療診療部の河原祥朗講師らの研究グループは、食道癌の内視鏡治療用にムコゼクトーム2という新しい機器(デバイス)を開発し、その有用性を検討したところ、従来のデバイスに比べ処置時間の短縮、偶発症(合併症)の軽減につながる結果が得られました。
 本研究成果は2013年7月24日、欧州消化器内視鏡学会誌『Endoscopy』電子版に先行掲載され、9月号の本誌に掲載される予定です。
 今回の成果をもとに、この新デバイスを用いることで、従来危険性が高く難易度の高い治療であった食道癌の内視鏡治療が安全な方法として行うことが可能になり、より多くの医療機関への普及に大きく貢献することが期待できます。
<業 績>
 岡山大学病院光学医療診療部の河原祥朗講師、岡田裕之教授、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器肝臓内科の山本和秀教授らの研究グループは、食道癌の内視鏡治療(内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD)に用いる新しい機器(デバイス)ムコゼクトーム2を開発し、その有用性を明らかにしました(図1)。


A:ムコゼクトーム2
B:実際の食道ESDに使用時の画像
図1 ムコゼクトーム2と使用画像

 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、胃癌に対する新しい内視鏡治療法として約10年前に日本で開発され広く普及してきています。この方法が食道癌の内視鏡治療としても応用され2008年から保険適応となっていますが、食道は胃に比べ壁が非常に薄く、管腔も狭いため、治療手技が難しく、手術が長時間に及ぶこと、合併症の頻度が高いことなどが問題でした。
 河原講師らの研究グループは以前、安全かつ短時間に胃のESDを施行するためのデバイスとしてムコゼクトームを開発し臨床応用してきました。
 その特徴は、安全に癌の粘膜下層の組織を剥離するために絶縁領域を増やし、流れると合併症をおこす胃の外側向きの電流をカットし内側向きにのみ流れるような設計になっていることです。
 今回、この技術を応用し食道癌のESD用に新たに開発したムコゼクトーム2を従来のデバイスと比較検討したところ、従来のデバイスに比べ処置時間は半分以下となり、偶発症(合併症)につながる危険因子を減らすことが可能であることわかりました。

<見込まれる成果>
 食道癌は食道に発生した上皮性悪性腫瘍であり50歳以上の男性に多く、アルコール、喫煙等が誘引となると言われています。本邦では年間約1万人の方が食道癌で亡くなられています。
 従来、食道癌は発見時で既に相当進行していて、早期発見が難しい疾患と言われてきましたが、最近の内視鏡機器の進歩によって早期段階の食道癌が診断できるようになってきました。これまでは外科手術か放射線化学療法(放射線照射と抗癌剤の併用)でしか治療のすべがなかった食道癌がこのESDという新しい治療法によって、早期発見できれば体への負担が少なく内視鏡で治療できるようになってきました。しかしながら、食道ESDは技術的に難しく、合併症も多いため、ごく一部の熟練した内視鏡医しか施行できないのが現状です。
 今回、岡山大学病院で新しく開発されたムコゼクトーム2を用いることで、従来の方法よりも短時間で安全に食道ESDが可能となると考えられます。それによって、より多くの医療機関への普及が可能となり、食道癌の内視鏡治療の発展、食道癌患者さん達への侵襲の少ない治療に大きく貢献することが期待できます。

発表論文はこちらからご確認いただけます

発表論文:Kawahara Y, Hori K, Takenaka R, Nasu J, Kawano S, Kita M, Tsuzuki T, Matsubara M, Kobayashi S, Okada H, Yamamoto K.  Endoscopic submucosal dissection of esophageal cancer using the Mucosectom2 device: a feasibility study. Endoscopy, 2013, Jul 24. (DOI: 10.1055/s-0033-1344229)

報道発表資料はこちらをご覧ください

<お問い合わせ>
(所属)岡山大学病院光学医療診療部 講師
(氏名)河原 祥朗
(電話番号)086-235-7219
(FAX番号)086-235-7670

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