光電変換色素NK-5962の神経保護効果を発見!
2021年08月31日
◆発表のポイント
- 岡山市の株式会社林原(NAGASEグループ)が製造する光電変換色素NK-5962は光電変換色素を結合したポリエチレン薄膜の人工網膜(光電変換色素薄膜型人工網膜OURePTM)の部材です。
- NK-5962分子には光とは関係なく、アポトーシスによる網膜神経細胞死を抑制する作用があることを以前から見出していました。
- 2018年より日本医療研究開発機構(AMED)の創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)の支援により、東京大学、大阪大学と共同研究を行い、NK-5962の薬物体内動態を調べました。
岡山大学学術研究院ヘルスシステム統合科学学域(医)生体機能再生再建医学分野(眼科)の松尾俊彦教授、同大学院ヘルスシステム統合科学研究科の劉詩卉研究員、同学術研究院自然科学学域(工)高分子材料学分野の内田哲也准教授は、2018年より国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)の支援に基づいて、東京大学創薬機構構造展開ユニットの金光佳世子特任講師および石井真由美特任研究員、大阪大学大学院薬学研究科薬剤学分野の中川晋作教授と共同研究を行い、岡山市の株式会社林原が製造するNK-5962の薬物体内動態を調べました。その結果、NK-5962の静脈注射によって効果を発揮する十分量の眼球内濃度が得られることが分かりました。NK-5962は光電変換色素薄膜型人工網膜(OURePTM)の部材であり、その分子自体に光とは関係なく網膜神経細胞死を抑制する効果があることが分かっています。さらに、静岡県立大学薬学部薬剤学分野の尾上誠良(おのうえ さとみ)教授との共同研究でNK-5962には光毒性がないことも示しました。
本研究成果は、2021年6月21日、スイスの科学誌「life」に掲載されました。
網膜色素変性など変性疾患には治療薬がなく、NK-5962は疾患の進行を遅らせて視力を維持する医薬品の候補になると期待されます。
◆研究者からのひとこと
2018年8月、岡山大学病院で東京大学創薬機構構造展開ユニット+BINDS事業紹介セミナーがあり、それをきっかけに支援を申込み、東京のAMEDに赴いて研究相談を行い、岡山大学、東京大学、大阪大学の三者で共同研究契約を結び研究を始めました。2019年1月、静岡県立大学の尾上誠良教授が岡山で講演される機会があり、薬物の光毒性測定も実現できました。多くの研究者の協力で網膜神経変性を遅らせる治療薬を実現していきたいと思います。 | 松尾俊彦 教授 内田哲也 准教授 |
■論文情報
論 文 名:Photoelectric dye, NK-5962, as a potential drug for preventing retinal neurons from apoptosis: pharmacokinetic studies based on review of the evidence.
掲 載 紙:life
著 者:Toshihiko Matsuo, Shihui Liu, Tetsuya Uchida, Satomi Onoue, Shinsaku Nakagawa, Mayumi Ishii, Kayoko Kanamitsu
D O I:10.3390/life11060591
U R L:Photoelectric dye, NK-5962, as a potential drug for preventing retinal neurons from apoptosis: pharmacokinetic studies based on review of the evidence.
<詳しい研究内容について>
光電変換色素NK-5962の神経保護効果を発見!
<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院 ヘルスシステム統合科学学域
(岡山大学病院眼科)
教授 松尾俊彦
岡山大学学術研究院 自然科学学域
准教授 内田哲也
電話/FAX 086-251-8103