国立大学法人 岡山大学

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ウイルス酵素を利用して新生児の命を守る!~B群連鎖球菌検査の検査精度を改善する方法を提案~

2021年10月26日

岡山大学
麻布大学
北里大学


◆発表のポイント

  • B群連鎖球菌は、新生児に敗血症・髄膜炎などの重篤な感染症を引き起こす病原細菌です。
  • 新たに作製した組換えペプチドグリカン分解酵素「エンドライシンEG-LYS」の利用により、B群連鎖球菌検査の検査精度が改善できることが示されました。
  • 少子化が進む今日、早急にEG-LYSを社会実装し、B群連鎖球菌検査へ応用することが期待されます。

  岡山大学学術研究院医歯薬学域 内山淳平 准教授、北里大学 大村智記念研究所 花木秀明 教授/感染制御研究センター長 松井秀仁上級研究員、麻布大学獣医学部 村上裕信 講師、麻布大学大学院博士課程 小方雅也 氏らの研究チームは、B群連鎖球菌と性状が類似した腸球菌「フェカリス菌」に感染するバクテリオファージ(ファージ)を分離・解析し、新たな組換えエンドライシンEG-LYSを作製しました。B群連鎖球菌と共に増殖するフェカリス菌を殺菌することで、妊婦さんに対して行われるB群連鎖球菌検査の検査精度を低下させている偽陰性の問題を解決できることを世界で先駆けて解明しました。
 研究成果は、2021年8月11日に米国微生物学会オンライン誌「Microbiology Spectrum」誌で公開されました。

◆研究者からのひとこと

バクテリオファージ(ファージ)は、細菌特異的に感染するウイルスです。妊婦さんの検査の精度を低下させている雑菌の問題に着目し、今回の研究で、臨床検査にファージ由来の酵素「エンドライシン」を応用すると検査精度を向上できることを示しました。現在、ファージ由来の酵素「エンドライシン」の製造は、国内では製造経験が少なく、高額になると想定されます。今後、社会実装を目指し、生産技術に関して研究を行い、安価に安定して供給できる生産技術の研究ができればと考えています。また、併せて薬剤耐性菌による感染症に対してファージ由来の酵素「エンドライシン」を治療や予防に利用する研究を精力的に行っていきたいと考えています。
内山准教授

■論文情報
論 文 名:Use of recombinant endolysin to improve accuracy of group B Streptococcus tests(和訳)B群連鎖球菌検査の精度向上のための遺伝子組換えエンドリシンの使用
掲 載 紙:Microbiology Spectrum
著  者:Hidehito Matsui#,1, Jumpei Uchiyama#,*,2,3, Masaya Ogata#,3, Tadahiro Nasukawa3, Iyo Takemura-Uchiyama2, Shin-ichiro Kato4, Hironobu Murakami3, Masato Higashide5, and Hideaki Hanaki1 (#, Authors contributed equally to this work; *, Corresponding author)
1 北里大学大村智記念研究所感染制御研究センター、2 岡山大学学術研究院医歯薬学域病原細菌学分野、3 麻布大学獣医学部、4 高知大学遺伝子実験センター、5 (株)江東微生物研究所

D O I:https://doi.org/10.1128/Spectrum.00077-21
U R L:https://journals.asm.org/doi/10.1128/Spectrum.00077-21


<詳しい研究内容について>
ウイルス酵素を利用して新生児の命を守る!~B群連鎖球菌検査の検査精度を改善する方法を提案~

<お問い合わせ>
岡山大学 学術研究院医歯薬学域 
准教授 内山 淳平
(前 麻布大学 獣医学部 准教授)
(電話番号) 086-235-7158


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