国立大学法人 岡山大学

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植物の病原菌侵入を防ぐ“鍵”分子の機構解明

2013年09月03日

 岡山大学大学院環境生命科学研究科の村田芳行教授(生物情報化学研究室)と資源植物科学研究所の森泉助教(環境応答機構研究グループ)の研究グループは、病原菌表面由来物質であるエリシターがカルシウム依存性タンパク質キナーゼであるCPK6を介して植物の葉にある気孔の閉口運動を誘導する分子機構を解明しました。
 本研究成果は、2013年8月6日、米国の植物科学雑誌『Plant Physiology』に掲載されました。気孔は多くの病原菌の侵入経路となり、エリシター誘導気孔閉口の制御が植物の病原菌耐性を強化する手法として注目されています。このキナーゼをコードする遺伝子に注目して品種改良を進めれば、病原菌耐性の高い作物を開発できるものと期待されます。
<業 績>
 陸生高等植物の葉の表皮に存在する気孔は、1組の孔辺細胞から形成される孔であり、光合成に使用する二酸化炭素の取り込みや蒸散による水分排出を調節する重要な器官です。しかし、気孔は多くの植物病原菌の侵入経路となっています。病原菌の侵入を阻害するために、孔辺細胞は病原菌表面物質であるエリシターを認識し、気孔が閉じます。エリシター誘導気孔閉口を強めれば、病原菌の侵入を気孔で止めることができると考えられます。しかし、エリシターの種類は多く、それぞれのエリシターが誘導する気孔閉口の機構をすべて研究することは困難です。さらに、植物は複数の病原菌に感染される場合が多いので、一種類のエリシター誘導気孔閉口の強化だけではその感染の阻害に十分ではありません。近年の研究により、様々なエリシターは孔辺細胞内のカルシウム濃度の上昇変化を介して、気孔閉口を誘導することが明らかになりました。この増加したカルシウムを感受する孔辺細胞内の因子の探索が非常に注目されています。
 岡山大学大学院環境生命科学研究科の村田芳行教授の研究グループは、モデル植物であるシロイヌナズナを用いて、逆遺伝学、生化学及び生物物理学の手法を駆使し、普遍なエリシターである酵母由来エリシター誘導気孔閉口の分子機構を解明しました。その結果、カルシウム依存性タンパク質キナーゼの一つであるCPK6がエリシター誘導カルシウムの濃度の上昇を感受し、気孔閉口を制御することが明らかとなりました。

<見込まれる成果>
  本研究は、酵母由来エリシター誘導気孔閉口において中心となる制御因子CPK6を発見し、エリシター誘導気孔閉口の分子基盤を提供しました。CPK6をコードする遺伝子に注目して作物の品種改良を進めれば、幅広い病原菌抵抗性の作物の開発が可能となり、現在我々が直面している食糧問題の解決につながるものと期待されます。

発表論文はこちらからご確認いただけます

発表論文:Ye, W, Muroyama, D., Munemasa, S, Nakamura, Y, Mori, I.C, Murata, Y. Calcium-dependent protein kinase, CPK6, positively functions in induction by YEL of stomatal closure and inhibition by YEL of light-induced stomatal opening in Arabidopsis. Plant Physiology, 2013 (doi: 10.1104/pp.113.224055)

報道発表資料はこちらをご覧ください

<お問い合わせ>
(所属)岡山大学大学院環境生命科学研究科 教授
(氏名)村田 芳行
(電話番号)086-251-8310
(FAX番号)086-251-8388

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