国立大学法人 岡山大学

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環境変動に対する植物の生存戦略を解明

2013年09月19日

 植物は移動できないため、様々な環境変動に対処する必要があります。しかし、その仕組みはあまり分かっていません。本学資源植物科学研究所植物ストレス学グループの馬 建鋒教授、山地直樹助教らは、環境中のマンガン濃度の大きな変動に対してイネの節に存在している輸送体が重要な役割を果たしていることを世界で初めて明らかにしました。本研究成果は、2013年9月19日に英国の科学誌Nature Communicationsにオンライン掲載されました。本成果を応用すれば、今後貧栄養ストレス耐性作物や栄養過剰ストレス耐性作物の作出に応用できる可能性があり、世界の食糧の生産性向上に貢献できます。
<業 績>
 植物は動物とは異なり移動できないため、様々な環境変動に対して克服する戦略を身につけています。しかし、その仕組みの多くは解明されておりません。今回、岡山大学資源植物科学研究所植物ストレス学グループの馬 建鋒教授、山地直樹助教らは、土壌中のマンガン濃度の大きな変動に適応するイネの仕組みを世界で初めて解明しました。マンガンは植物の生育にとって欠かせない必須栄養素ですが、過剰に蓄積しても生育障害を引き起こします。一方、イネが生育する水田土壌中の可溶性マンガン濃度は、湛水条件などに応じて数百倍の変動があります。イネは節(せつ)に存在するマンガンの輸送体OsNramp3の働きで、その変動するマンガン濃度に対処していることを突き止めました。環境中のマンガン濃度が低い時には、OsNramp3は少ないマンガンを優先的に成長の活発な新葉や穂に分配する働きをします。しかし、環境中の濃度が高くなると、OsNramp3タンパク質は素早く分解され、その結果、過剰なマンガンは古い葉に分配されます。OsNramp3が環境中のマンガン濃度の変化を感知して、まるでスイッチのように機能していることを示しています。

<見込まれる成果>
 植物の生育に必要な栄養分(ミネラル)が不足する土壌、逆に過剰に存在する土壌は世界各地に多く存在し、作物生産の制限要因となっています。今回の仕組みを応用すれば、栄養分が不足する時には、限られた養分を成長の活発な組織へ優先的に分配し、生育を改善できる可能性があります。一方、ミネラルが過剰な場合は、活発な組織への輸送をやめ、古い組織へ配分することで生育抑制を軽減することができます。

<補 足>
 マンガン(Mn)は光合成や様々な酵素の活性などに必要な金属で、植物の生育に欠かせない必須元素です。植物の正常な生育に必要なマンガンの量は乾物重あたり僅か50-100mg/kgです。しかし、土壌中の可溶性マンガン濃度は大きく変動します。特にイネが栽培される水田環境では、水を張っていない状態では、土壌溶液中のマンガン濃度は1μµM以下で、湛水状態では、200μµM以上になります。植物は移動できないため、健全な生育のためにこのような大きな変動に対処しなければなりません。今回の発見は、イネの節に存在する輸送体がそのような環境変動に適応するために働いていることを初めて突き止めました。

<脚注説明>
 輸送体:様々な元素や化合物の輸送を担うタンパク質。OsNramp3タンパク質は細胞の外から中へとマンガンを輸送する。
 節(せつ):イネ科植物の茎に作られる発達した部分。葉-根(冠根)-脇芽と茎(または穂)の接点にあたり、養分の分配に重要と考えられている。

 本研究は、文部科学省科学研究費補助金(若手A)および新学術領域研究「植物環境突破力」の助成を受け実施しました。

発表論文:Yamaji N, Sasaki A, Xia JX, Yokosho K and Ma JF: A node-based switch for preferential distribution of manganese in rice. Nat. Commun. 4:2442 doi: 10.1038/ncomms3442(2013).


図1 OsNramp3遺伝子破壊株の表現型。OsNramp3遺伝子の破壊株では、新葉や根の先端、穂へのマンガンの分配ができないため、葉の黄化、根端の壊死、種子不稔を引き起こします。


図2 節に存在するマンガン輸送体OsNramp3は環境中のマンガン濃度を感知して素早く分解します。50µMのマンガンに曝すと、OsNramp3タンパク質(図の赤い部分)は約4時間で消失します。


報道発表資料はこちらをご覧ください


<お問い合わせ>
岡山大学資源植物科学研究所
植物ストレス学グループ 教授
(氏名)馬 建鋒
(電話番号)086-434-1209
(FAX番号)086-434-1209
(URL)http://www.rib.okayama-u.ac.jp/plant.stress/index.html

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