国立大学法人 岡山大学

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急性呼吸促迫症候群への長期的な水素ガス吸入は、肺内の炎症を軽減し、慢性期の呼吸機能低下を緩和する

2022年02月17日

◆発表のポイント

  • 本研究成果は、急性呼吸促迫症候群(ARDS)への長期的な水素ガス吸入が、慢性期の呼吸機能低下を緩和する可能性を示唆するものです。
  • 小動物実験で、ARDSを模したブレオマイシン肺傷害への水素ガス吸入が、肺の免疫細胞である肺胞マクロファージの炎症物質の産生を抑制し、肺の器質化を軽減しました。
  • 今後研究が進むことで、ARDSの後遺症軽減に役立つ新たな治療法として期待されます

 岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)救命救急・災害医学の青景聡之助教、内藤宏道准教授、中尾篤典教授の研究チームは、長期的な水素ガス吸入を小動物の急性呼吸促迫症候群(ARDS)を模したブレオマイシン肺傷害に対して行うことで、慢性期の肺の器質化(線維化)と呼吸機能低下が緩和することを示しました。
 これらの研究結果は、令和3年10月31日の英国の呼吸器内科雑誌「BMC Pulmonary Medicine」のResearch articleとして掲載されました。
 ARDSは過剰な炎症に起因することがわかっていますが、炎症自体が収まった後も肺の器質的な障害(線維化)が残存し、長期的な後遺症に苦しむ患者さんがいます。水素には活性酸素を還元し無毒化する効果が知られていますが、私たちは水素にはさらに炎症を緩和させる効果があることを報告してきました。ARDSの原因となる過剰な炎症を長期的な水素ガス吸入によって抑制することで、慢性期の呼吸苦の後遺症を緩和できると考えられます。
 本研究成果は、ARDSの後遺症に苦しむ数多くの患者を救う新たな治療法となる可能性があり、新型コロナウイルス感染症のような呼吸器感染症にも応用できる可能性があります。

◆研究者からのひとこと

 私たちの研究室では、水素ガスや一酸化炭素ガスなどの気体を用いた治療開発の研究を行っています。基礎研究から臨床研究まで、肺炎や臓器移植、クラッシュ症候群、肺挫傷、ECMOなど様々な病態の研究も行っています。興味のある方はぜひご連絡ください。
青景助教

■論文情報
論 文 名:The effects of inhaling hydrogen gas on macrophage polarization, fibrosis, and lung function in mice with bleomycin-induced lung injury
掲 載 紙:BMC Pulmonary Medicine 21:339 (1-15), 2021
著  者:青景聡之、瀬谷海月、平山隆浩、野島 剛、池谷真澄、石川倫子、寺崎泰弘、谷口暁彦、宮原信明、中尾篤典、大澤郁朗、内藤宏道
D O I: 10.1186/s12890-021-01712-2
U R L:https://bmcpulmmed.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12890-021-01712-2

<詳しい研究内容について>
急性呼吸促迫症候群への長期的な水素ガス吸入は、肺内の炎症を軽減し、慢性期の呼吸機能低下を緩和する


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)
救命救急・災害医学
助教 青景 聡之
(電話番号)086-235-7427(FAX) 086-235-7427

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