国立大学法人 岡山大学

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新規バイオマーカーを用いて難治性川崎病の病態を解明

2022年06月07日

◆発表のポイント

  • 川崎病は子どもの代表的な炎症性疾患であり、心臓に重い後遺症を残す場合があります。
  • 新規バイオマーカーHRG, HMGB-1が難治性川崎病に深く関わっていることを発見しました。
  • 今後、川崎病の新規治療法の開発やその他の疾患の解明につながることが期待されます。

 川崎病は原因不明の全身の血管炎であり、子どもに特有の病気です。重篤な合併症として冠動脈瘤があり、既存治療の効果が不十分な場合に発症しやすくなります。治療によく反応する人としない人の違いについて、これまで明らかになっていませんでした。
 岡山大学学術研究院医歯薬学域小児医科学分野(塚原宏一教授、八代将登助教、難波貴弘院生)と創薬研究推進室(西堀正洋特任・特命教授)らの研究グループは、普段は細胞核の構成因子として存在し、炎症刺激で放出されるHMGB1と、炎症を増幅させるHMGB1の働きを抑えて血管内皮を保護するHRGが、難治性川崎病の病態に関わっていると考えました。
 本研究の結果、川崎病の治療経過中にHRGが低下しHMGB1が上昇すると、既存治療が効きにくくなることを発見しました。今回の知見は、より効果的な治療薬の開発やその他の様々なタイプの血管炎の病態生理の解明につながることと期待されます。
 本研究は、2016(平成28)年度より4年間、日本学術振興会科学研究費助成事業の支援を得て実施されたもので、「小児リウマチ性疾患の活動性評価に有用なバイオマーカーの検索」をテーマとした研究成果です。
 研究成果は、4月29日付けで、国際学術誌「Modern Rheumatology」に掲載(Online先行発表)されました。

◆研究者からひとこと

体の中で何が起きているのかが明らかになると、病気の重さの判定や新しい治療法の開発につながります。今回の結果が川崎病だけでなく、同じ血管炎の高安動脈炎やベーチェット病などの難病の解明にもつながればいいなとワクワクしています。
八代助教

■論文情報
論 文 名:Decreased Levels of Histidine-Rich Glycoprotein and Increased Levels of High-Mobility Group Box 1 are Risk Factors for Refractory Kawasaki Disease
掲 載 紙:Modern Rheumatology
著  者:Takahiro Namba, Masato Yashiro, Yosuke Fujii, Mitsuru Tsuge, Keyue Liu, Masahiro Nishibori, Hirokazu Tsukahara
D O I:10.1093/mr/roac040
U R L:https://doi.org/10.1093/mr/roac040

■研究資金
 本研究は、下記の支援を受けて実施しました。
 日本学術振興会 科学研究費補助金 若手研究(B)
 研究課題名:「小児リウマチ性疾患の活動性評価に有用なバイオマーカーの検索」
 課題番号:16K19646
 研究代表者:八代 将登

<詳しい研究内容について>
新規バイオマーカーを用いて難治性川崎病の病態を解明


<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院医歯薬学域 小児医科学分野
助教 八代 将登
(電話番号)086-235-7249
(FAX)086-221-4745

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