国立大学法人 岡山大学

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渦中の「ハチの干潟」(広島県竹原市)からサクラガイ属二枚貝の新種を発見!

2022年06月14日

岡山大学
高知大学

◆発表のポイント

  • ニッコウガイ科のサクラガイ属は、日本では多くの人にその名を知られた美しい海産二枚貝類の一群です。しかしその分類は今も混乱したままで、多数の隠蔽種の存在が指摘されています。
  • 今回、広島県竹原市ハチの干潟から、新種ハチザクラを記載しました。本種の現生個体は瀬戸内海に産出が限られ、更新統の化石が愛知県でのみ知られています。
  • 本種は既に絶滅の危機にある可能性が高く、保全措置が強く求められます。

 岡山大学学術研究院環境生命科学学域(農)の福田宏准教授、松山市在住の石川裕氏、高知大学理工学部生物科学科の伊藤颯真学部生、国立科学博物館の芳賀拓真研究主幹の共同研究チームは、広島県竹原市の「ハチの干潟」から二枚貝綱ニッコウガイ科サクラガイ属の新種を見出し、Nitidotellina hachiensis ハチザクラとして記載しました。
 この新種の現生個体は瀬戸内海中央部〜西部(岡山・広島・山口・愛媛各県)で確認された一方、化石は愛知県の更新統千葉階に産出し、現在は分布域が大幅に縮小した可能性の高い稀少種で、近い将来絶滅の恐れもあります。一方、ハチの干潟では発電所建設計画が環境影響評価なしに進められており、本種の個体群や棲息環境への影響が危惧されます。
 本研究成果は日本時間6月4日、日豪共同刊行の軟体動物学雑誌「Molluscan Research」にオンラインで掲載されました。

◆研究者からひとこと

今回の新種ハチザクラは昨夏、ハチの干潟で発電所建設計画が浮上し、5つの学会で環境保全を求める要望書の提出が検討されていた際に、私が「中の人」を仰せつかっている軟体動物多様性学会のツイッターアカウントで、現地の生物多様性の高さと貴重さを多くの人に知ってもらおうと、貝類の稀少種を順次ご紹介していた途上で存在を認識しました。 ウズザクラの写真を撮ろうとして20年ほど前に採集した標本を見直したら、別種の混在に気づいたのが全てのはじまりでした。この意味では、ハチザクラはハチの干潟で発見された種であるのと同時に、研究室内で長年眠っていた標本中から、しかもSNSの活用を前提とした上で発見された、とても今日的な新種とも言えるでしょう。
福田准教授

■論文情報
論 文 名:Nitidotellina hachiensis n. sp. (Bivalvia: Tellinidae) from the Seto Inland Sea, between Honshū and Shikoku, western Japan
掲 載 誌:Molluscan Research
著  者:Hiroshi Fukuda, Hiroshi Ishikawa, Soma Ito and Takuma Haga
D O I:10.1080/13235818.2022.2068112
U R L:https://doi.org/10.1080/13235818.2022.2068112

■研究資金
本研究の一部は、公益財団法人水産無脊椎動物研究所(2014年度個別研究助成 Ko-29、代表:芳賀拓真)の支援を受けて実施しました。

<詳しい研究内容について>
渦中の「ハチの干潟」(広島県竹原市)からサクラガイ属二枚貝の新種を発見!

<お問い合わせ>
岡山大学学術研究院環境生命科学学域(農)
准教授 福田 宏
(電話番号・FAX)086-251-8370

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